03.冗談とも言い換えられる嘘


「という訳で必殺技を作りたいんですが」
「また唐突な話ですね。しゃもじアタックなら伝授しましょうか?」
「またまたご冗談を」

夕暮れ時、さあ今日も一杯引っ掛けるかと陽気な店主が運営する陽気なカフェに顔を出したパッチーは、ゴスロリもかくやと言わんばかりにふりふりな衣装に身をまとったかなた氏に捕まったのである。まる
などと心の中で呟きながら、じろじろと格好を眺める。今日の衣装は普段の緑色のカナリアンドレスではなくピンクを貴重に緑のアクセントを加えた新型だ。バージョンアップしたんだろうか?

「へいぱちおさんや。乙女のカッコをじろじろ眺めるとは紳士にあるまじき行為ですなー。あ、かなたんその恥じらった表情でくいっと左斜め前を向いてくれる?顎引いてねーはいチーズ」
「ピース」
「ちょっ、あんたじゃない!?」

かなたを押しのけて撮影場に割り込んだイソレナをトゥエルヴが蹴り飛ばす。
「仲が良いなぁ………」とパッチーが生暖かい視線と笑みを浮かべてその様子を眺めていると、「あの……」とかなたが声をかけてくる。

「いい加減この格好恥ずかしいんでさっさと話を終わらせたいんですけど」
「それは大変申し訳ない。てか恥ずかしいんですね」
「割とガチで恥ずかしいんですよこれ本当に」
「心中お察しいたします。本当、何でこんなことになったんでしょうね?www」
「今全力でお前が言うなと電波が飛んできました」
「え?」

げふんげふんと咳払いをして、かなたが所で!と話を切り替える。

「ああ。分かってますよ、必殺技でしたね。でもまたどうして自分に?」
「説明しましょう!………何でですか?真夜さん」

ズダン、と大きな音がカウンターの向こうから轟き叫ぶ。どうやら何かが起きたらしい。
パッチーが目線を向けると、そこには天を突くような足が!!

「へんじがない。どうやらころんでしまったようだ?」

返答の変わりに飛んできたコーラを、パッチーは口で受け止める。
よろよろと立ち上がった真夜さんはぐっと親指を立てる。

「失礼。驚いた表紙に手が滑ってしまったようでして」
「明らかに転んだ後に飛んできたっぽかったんですが」
「何故必殺技に関して尋ねるかというと他でもない!」

かなたの突っ込みを華麗にスルーして、真夜はびしっとパッチーのしゃもじを指差した。

「パッチーさんの技が覚えやすいからです!」
「ちょっと俺家かえって不貞寝してきますね」
「パッチーさん待ってください、私を置いて行かないでっ」
「すっごく俺が悪いことした気持ちになる台詞ありがとうございますー」

何が何だか分からないと言った表情の二人に、真夜が「あっ」と小さく呟いて、

「他の人が技名を覚えやすいって意味ですよ勿論?」
「勿論最初から知っていましたとも」
「やだなーパッチーさん勘違いしてもう!」

真夜の言葉にすとん、とテーブルに座りなおして、パッチーとかなたは目線をそらしながら高らかに笑い出す。
その二人の様子をにこやかな笑みで眺めながら、真夜が口を開いた

「話を進めていいですか?」
『イエス マム』

同時に帰ってきた返答に頷いて、真夜はカウンターから出て、パッチーたちの座るテーブルのイスに腰掛けた。

「今見てもらっている衣装は、まあカナリアンのパワーアップイベントの際に使おうと思っているものの候補なんですが、どうでしょうか?」
「成る程。今までのものと違った色合いの物ですね……かなたさんに良く似合うと思いますが、それと必殺技。どんな関係が?」
「それに関しては私が」

パッチーの質問に、イソレナを取り逃がしたトゥエルヴが答える。
パッチーが目線を外にやると、HAHAHAと笑いながら屋根の上を走り去るイソレナの姿があった。
見なかったことにしよう。

「新コスチュームと来れば新技。それも、今までのをはるかに上回る威力の、インパクトの強い技が必要になるんですがねー」
「そうなると、今度は技名がネックなんですねー。技を出すだけなら武装でも何とかなりますんで」
「成る程、だから覚えやすい技ですか。でもしゃもじアタックじゃ技名も糞もないのでは?」
「そこは私達も一緒に考えますんで。煮詰まっちゃってて進めないんですよね。メフィストはどっか消えるしアランは泡吹いてるし」
「何があったんですかアラン君!?」
「旅立ったと思ってください」

かなたの問いかけに、遠い目で答えるトゥエルヴ。何か不味いことを利いてしまったような気がして思わず「な、成る程」と呟きいやいや成る程じゃないと気合を入れるかなたんのそばで、二人のネタ大好き人間が互いの案をぶつけ合っていた。

「カナリアンスーパーモードとかどうでしょう。金色に光り輝いて相手を虚無に導く」
「それ別作品げふんげふん。個人的には主武器が剣ですしそこを押したいのですが」
「一刀両断ウルトラカナーとか?」
「それならカナティック斬とかも」

二人の余りに真剣な物言いに、たらりと冷や汗を流したかなたが声をはさむ。

「技名にかながつくのは確定でしょうか?
「え?」
「え?」
「………なにそれこわい」



最終的には。

「カナリアン・ゴッドへの変身からの一刀両断・カナティック斬が必殺技の名前になりました」
「全部綺麗に混ざりましたね〜」
「マジで勘弁してください」





次回冗談予告
「………カナリアンに……わたしはなる」
「つくえちゃん、しゃもじ持って何してるんでつか?」

あさまちはきょうもへいわである


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