「ポコス君。性転換してみる気は無いかね?」
「馬鹿じゃねーの?」

新作だろうメガネの縁をつっと指でなぞり上げながら、ふと思いついたように声を掛けた太陽にポコスは親指を立てて応える。特に期待していなかったのだろう、「そうか………………そうか」と重いため息をつきながら、太陽は着用していた傷だらけのグラスを外してテーブルにおき、新しい丸メガネを身につけた。
普段つけているものと違い、楕円系のフレームと大きなレンズは少々厚ぼったくサイズも大きい気はするが、許容範囲といった所か。普段着ているぶかぶかの白衣が肩からズレ落ち、胸元が大きく膨らんだ白いワイシャツが姿を現す。こいつを見下ろすのは初めてかもしれないなぁと感慨深く頷いて、トントンと頭を指で小突き、一呼吸をおいて目を閉じる。

「新年だからかな。多分疲れたんだろうな」
「ところがどっこい」
「……待て。少し待て。今から納得する………よし良いぞ」

属性:太陽に対する耐性持ちのポコスは深呼吸一つで落ち着きを取り戻す。詰まらなそうに唇を尖らせる太陽に手近な置物を投げつけるとふぎゃんと音を立てて崩れ落ちた。

「……鈍ってないか?」
「と、等身が変わるとバランスがね?」
「たまにはドラテンに来い。ボコってやるから」
「」

親指を立てたポコスに二の句が告げない太陽。珍しい光景だと思われる。

「して。質量まであからさまに変わってるけどどうがなんでこうなった?」

太陽の頭の上に手を載せると確かな毛髪の感触が手のひらから伝わってくる。もはや変装ではなく変身の領域だ。

「なでポは実装されてないのだよポコっち、本当にすまない」
「」
「おk、すまないわかった落ち着け話せば分かミギャー」



「極端な話、実は元々あったシステムを使ってましてな超重いんですけど」
「ほぉ?そんなのあったのか」

太陽は膝の上に載せたフルプレートが気になるようで、二言目には重い、しびれると文句を言いながらメガネについての説明を始めた。もちろん、正座している。

「魔鏡のお兄さんが居るでしょう」
「……あ。ああ居るな。お兄さんと表現されたのは初めてだから少し困惑した」
「彼の対象のコピーを作る秘密道具チックな能力に少し手を加えてみたんです」
「完璧別物だと思うけど、まあ。そうか。そっち方面は俺も良く分からんから納得したい」
「デレましあ、足やめて。痺れる」

余計な一言を言われる前に足の裏を小突くともだえ始める。
この男のなんか変な発明力はもう諦めの領域で捕らえているので、驚きはしない。
納得できるかはまた別だと思うが。

「こ、これで買ったと思うなよだいにだいさんのわたくしが」
「いいから続きはよ」
「ミョホー!?」

足を小突くと奇声を上げて太陽が身悶える。
……これ、中身が太陽じゃなければ俺傍目から見たら犯罪者じゃなかろうか?
ふと思いついた瞬間、背筋をつめたい汗が走った。

「ま。まあ、あれです。このメガネはかけた人の性別を物理的に変更する魔法のメガネというわけでわたくしの全知全能をかけて完成させた真改造メガネなのですよふぅははー」
「把握した。その技術をもっと他に生かせよ」
「HAHAHA趣味に生きないで何の為に生きるんですか?私は愛に生きてます」
「愛におぼれて溺死するといい」

いつもどおりの表情を浮かべて、ポコスはまた足を小突く。
割と日常的な平常運転な日の話。




「という経緯を経てここにこのメガネをおいていきます」

にこにことした表情でメガネの似合うナイス害は会話をしていたカフェのテーブルにメガネケースを置いて足早に去っていった。
沈黙するマスター陣と足早に立ち去るドラゴンたちに明日はあるか。
カフェが数日閉まる事になるのは、まあしようがないのかもしれない?



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