ある日、126番地。
青い髪の主人は、沈鬱な顔で炎竜をみやる。
「お金がありません」
先日、126番地は改装した。増築だ。
主に風竜が某所の光竜をお嫁にもらうためである。
しかし。
「なぜそれを僕に言うの。かなた」
「ベム君が小物を打っていることは知っています。少しそのお金をうちにいれる額を増やしてくれたらいいと思います」
「…僕そんなにもうかってもないんだけど」
「それでも! それでも家を増築したいと一番言ったのは君だもの!」
「まあ、言ったけど」
同部屋なんて認めるか!と騒いだのは自分だが。
内心で呟いて、ため息をつくベム。
あきれたようなその姿に、かなたはびしりと指をつきつける。
「協力してくれないなら、考えがあるんだから!」
いう彼女の手の中に、一枚の写真。

「こういうの焼き増ししていかがわしい感じにして売ってやるぅ―――!」
「色々待って。」
いつのだよ。とか。
そもそもいつのまにかとったんだ。とか。
それはどういう加工なんだ。とか。
こういうの、って他にもあるようなその言い方はなんだ。とか。
浮かんだ言葉をすべて忘れて、彼は主の肩をがしりとつかんだ。
「協力する気になった?」
「かなたに殺意がわいた。」
きっぱりと告げられた言葉に、彼女はへにゃりとまゆをさげる。
「…私の竜とても怖いの…」
「怖くしてるのはかなたでしょう」
ごもっともです、とつぶやく声は小さい。
小さく、反省はしているようだが。彼は続ける。
「…なんで。僕に。それを言う」
「風矢君にいわれたら殺意わいた宣言の前に殺されちゃうし」
「なんで稼ぐ方法がそういう方面に限定されてるんだよ」
「メー君にいったら…変にこじれそうじゃない…」
「まあそうだろうけどね」
だから僕というのが気に食わないけれど。
冷やかな言葉に、かなたはさらに眉を下げる。ぼそぼそと言い訳を口にする。
「でもね、いかがわしいは冗談だよ? こう、かわいい感じにね。プロマイドっぽくね。
例のあれのお土産っぽく加工したら需要、ありそうだからさあ…」
例のあれ。
彼女がそういう言い方をするのは、つまり。
「つまり自分一人が魔法少女をやるのが嫌で、周りを巻き込む。その一環だね」
「ぼ、ぼかした言葉を言われた!」
苦しそうに喉を押さえる主に、炎竜の目は冷ややかだ。
まきこむな。迷惑だ。
珍しいわかりやすさでそう語る顔のまま、続ける。
「カナタリアンが嫌だと」
「く、繰り返さないで!」
「なんだっけね、主題歌は確か―――…」
「ご、ごめんなさい許して! やめて!」
わたわたと頭を下げるかなたのその声には、やがて嗚咽がまじった。
後日。某カフェにて。
マグカップに満たされたカフェオレをぐるぐるとかきまわすかなたは、唇を尖らせて愚痴る。
「―――で、それからずーっと怒られたんですよう。いかがわしいっていうのは冗談だって何度も言ったのにー。すごく怒られた…」
「そうだったんですか」
それを他でもないその劇の立案者の一人に愚痴っている辺り、なんというか。ネタなのだろうか。そのようだから劇が続くのだ。
そんな言葉をひっそりと呑み込んで、ほほ笑む真夜。
「そんなかなた様には素敵な手段がありますよ。そろそろ次の公演はいかがでしょう」
「おおう案の定!?」
ビクリと肩を揺らすかなたの手の中、カフェオレが激しく波打つ。
それ以上に激しく首がふられる。勿論、横に。
「嫌ですよ!? いくら真夜さんのお誘いでもそろそろ嫌なんだもんー!」
「とてもかわいらしいですよ?」
「嫌なもんは嫌だもん!?」
嫌なんだー!
言い切って机につっぷすかなたは、それきり何も言わない。力尽きた。
動かなくなった友人に、真夜は再度ほほ笑む。
その表情のままちょいちょいと肩をつついて、そっと告げる。
「かなた様かなた様」
「…なんですかあ…」
ぐったりしんなりとした彼女の目に映るのは、やさしい笑顔の真夜。
「そろそろおいもの時期なんです。収穫のバイトはいかがでしょう」
ぐったりしんなりべっしょりしていたかなたの瞳に、はきがもどる。
プルプルと震える姿に、真夜はあら、とつぶやいた。
「受けていただけませんか?」
「そ、そんなわけないですよ!」
力いっぱいこたえるかなた。
それはよかった、と答える真夜はスッと自分の分のカップを口元に運んだ。