リビングで豆をさやからとりだしていると、窓から風矢が見えた。
 風矢が、というか。小町も見えた。…遊びにきてるのか。
 見えただけなのにらぶらぶというか。なんというか。
 最初に見た時はあまりの風矢の…なんつーか、甘さ的な……うん…なんだろうな…ともかく衝撃を受けたが。今は慣れた。
 もう、好きなだけ、いちゃつけばいいと、思う。
 なるべくみたくねえけど。心臓に悪いから。気持ち悪いから。
 …しかし。
「…風矢は…」
 そんなことを思い出しながら、豆の処理に加わった風矢に声をかける。あれは見送りだったのか。
 風矢は嫌そうに、それでも確かに顔を上げた。
 …こういう顔ばっか見てるから。なんか風矢の面をかぶった化け物(?)を見たようで怖かったんだよな。最初。
「お前、付き合ってこんだけたっても呼び方『小町さん』、なんだな…」
 そんなことを思いながら、しみじみと呟いてしまう。
 風矢はさらに嫌な顔をして、げんなりって感じに口をひらく。
「だから。なんですか」
「いや。別にどうでもいいけどさ。なんか気恥しいから呼び捨てじゃないんだろ?
 前そう聞いたけど、それはおかしいと思ったんだよ。お前、あんだけ恥ずかしいマネ常日頃してるのに」
「その通りだね」
 実はさっきからいたベムが、短く同意する。
 短い、のに。色んな恨みつらみを感じる気がするのはきのせいか?
 …いや、追求はしないでおこう。
「…君達から恥ずかしい呼ばわりされると死にたくなるのでやめてくれませんか。何度か言ってることですけど」
 その結果、苦いというかもはや苦しそうに言う風矢。
「はあ? そっちこそ自分を棚にあげてるだろ。みてるだけでいちゃついているって分かるってどれだけだ!」
「いやいやいや! それこそ! あなたと磨智さんに言われたくありませんよ!」


「…二人ともはぜればすべて解決」
「いや君も最近恥ずかしい、というか! なにまだ付き合ってないなんて面白いこと言うんですか!
 この間なんて雨降ってるとき帰ってきたらかいがいしくあたためたタオル差し出されて! 『おかえり、冷えたかと思って』って! 夫婦の会話ですか!?」
「僕だけにしてくれたことじゃない。そもそもその理屈でいえば磨智が先に緋那が夫婦だ…」
「な…怖いこと言うな!」
 誰がわたすか!
 と、言いかけて慌てて口を閉じる。く。これが恥ずかしいことはわかる。…分かるし俺は言ってねえじゃねえか。なに恥ずかしいって言われるネタがあるっていうんだ…
「メーはいいたいことが顔にただ洩れる」
「ええ…今も恥ずかしく顔に書いてある…」
「お前ら喧嘩してんだろ! 今そうやって団結すんなよ!」
「団結もなにも…、…ベムと仲が悪くなっても、あなたが分かりやすいこととは関係ありませんし」
「そういう君も何かと顔にでるけどね。口に出さなくても最近一日の予定わかるよ。
 会う約束がないらしい日は、おとなしい」
 え。まじで。
「……報われなくても毎日会える喜びをかみしめればいいんですよ君は」
 ここまで嫌な顔をするってことはマジなのか。知らなかった。
「かみしめて。のみこんで。その上で思っている。爆ぜろリア充」


「炎龍がいうと怖いよな、その台詞…」
「僕は何もしない。ただ、君はたまに本気で爆発しているかのように赤くなる。
 風矢もそのくらい赤くなっていっそ倒れてしまえばいいのに」
「だから僕にしか言わないんですか、その文句!」
「っていうか倒れるところとか見てたのかよ! 常に緋那しかみてない面して!」
「目に入るんだから、しかたない」
「まあ目に余るいちゃつきぶりですからね…しかもそれに気づかない。
 そんな馬鹿と同じ行動をとるわけがないでしょう!」
「なんでお前はいちいち俺を馬鹿にするんだよ!」
「真実言ってるだけでしょう」
「ほらまた! なんなんだよお前!」
 まっとうなはずの俺のつっこみに風矢がはんと鼻を鳴らす。
 く…小町に見せたいぞこの面! まじで!
 嫌気にしない気がするけどなあいつ!
 でもむかつくじゃねえか!
「なんなんだ、もなにも。
 風矢は馬鹿じゃないかもしれないけど、今は小町馬鹿」
 むかつく、と思っていたんだけど。
 ベムの一言で露骨に言葉をつまらせる風矢に、溜飲が下がる。
「それも…君に言われたくはないですよ…」
 疲れきったような声に、ただいまの声がかぶったのは同時。
 どこかから帰って来たらしいかなたに、俺達はよくわからない争いを収めた。



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