※上半身肌色注意
※でも別に色っぽくない。
※どうしても嫌な人は逃げて下さい。
02. びしょ濡れのTシャツ。 ―いやほんと、誰得?―
その日、俺は太陽に呼び出されて、彼の事務所の前に立っていた。約束の時間になって数分立とうとしているが呼び出した張本人はまだ姿を現さない。
別に待たされているのには慣れてるから腹が立ったりはしないけれど、雑用の仕事を他の龍に任せている以上なるべく早く戻りたい。そう思っていると、上の方でガラガラと窓が開く音がした。
「(まだ二階にいるのかよ、あの野郎)」
まさかこの距離で用件を言うつもりじゃないだろうなと建物の方を向いて顔を挙げかけた瞬間、
「な――」
ばしゃっ
何故か上から水を吹っかけられた。思わず閉じてしまった目を開けられないでいると、
カシャカシャカシャ がこん
何度かのシャッター音の後に、アルミが凹むような音が、頭への衝撃と共に耳に届いた。
……恐らく、吹っかけられた水が入っていただろうバケツか何かが丁度頭に当たった。当たった、というより、丁度帽子を被る様に頭の上に乗ってきた、という方が適切だろうが……
「(……太陽、だろうな、これは……)」
ふと気付くと俺は建物の中に入り、水を掛けてきたアレが居るだろう部屋へ足を進めていた。

「うわ。どうしたんだその恰好は、大丈夫かポコス」
「…………」
「ポコス? おーい……」
その部屋に入ると、太陽だけではなく咲良も居たらしい。しかしそこはどうでもいい。
「太陽……てめぇ……」
「HAHAHA、これも依頼ですからね。ナイスショットをありがとうございます、ポコス君」
ぷちん、と何かが切れた。
「ちっ、逃がしたか……」
「……あいつ……白衣……あんな泥だらけにして……」
「……自分で作った水溜りに自分からはまるとか太陽らしくないな。まぁ良い気味だけど……っくしゅ」
「あーあ、濡れたまま走り回るから」
そう言って咲良は奥からハンドタオルを持ってきてくれた。まだ被りっぱなしだったバケツを脱いで、代わりにそのハンドタオルを被りながら反論した。
「うるさい。お前が止めてたらこんなことにはならなかったっての」
「外にお前が居るなんて知らなかったんだよ」
「へぇ、そうかい……そもそも誰だよ変な依頼してきたのは……」
「さあ? 帳簿でも見れば?」
「……こんな事頼む奴一人しか思い浮かばないんだけどな……」
一応確認したらまさにその人物で、思わず心の中に雨が降りそうになった。
「何故バレたし!」
現像出来た写真の束を差し出すと、彼女はいつもの笑顔を引きつらせて、数歩後退りして叫び出した。
「お前以外他にいないからだよ」
「えぇー! 可愛い新入りかもしれないとか考えなかったんですか?」
「断られるなんて夢にも思わないだろう楓だったら直接俺に言いってくるだろうからな。となるとお前しかいない」
「うぅ、そんな……」
信用無いのですかとオロオロして見せる彼女に、俺はぴしゃりと言い放った。信頼だとか恋心だとかそういう問題ではない。
「大体何でわざわざこんな事するんだよ。誰が得するんだよ」
「だって貴方のファンのお客様にサービスでこういう写真あげると喜ばれるんだもん」
「おいこら……大体、そういうファンは要らん」
「うぅ……そう思って、毎回貴方の筆跡に似せて“特別に俺の写真あげるからお願い。もう来ないで”って書いてあげてるのに」
「マジで写真あげちゃってる時点で駄目だっての……」
どうしようこの店長誰か止めてと、泣きそうになった。