初めての外食
しとしとと落ちる雨。ここ数日朝町に降り続く雨のお陰でお客が来ず、どうなるかと不安を抱き始めていた、ある日のことだった。
カランカラン
「いらっしゃいませー」
昼を少し過ぎた時間。本日初めての鐘の音に声を張り上げる。と、見知った顔が3つ、並んで店内に入ってきた。
「やあやあポコッち久方ぶりですなぁおやそんな梅干しの種を噛み砕いたような顔をしてどうしましたかなああそうかポコッちはあれでしたな今度うまい棒で一杯いきましょうなに私に」
「わーい、外食でつー」
「…………楽しみ」
珍しい客が来たもんだ、とチラリと頭の隅で思考しながら、ポコスはにこやかな笑顔で2人の可愛らしいお客様を席に通した。
「いらっしゃいませ、お二人様ですね。こちらの席にどうぞ」
「ちょいとポコっち。ナチュラルに私を無視するとは腕を振りましたね」
「振ってどうすんだよ。挨拶か?」
訂正。財布付きのようだ。
しかし……なんだろうかこの組み合わせは。
いや、確かにこいつらは兄弟ではある。それは勿論知ってるが、普段スタンドイズマインとでも言うほどに一人でうろちょろしている太陽が家族連れなのが信じられない。
……いや、今は、仕事だ。
一つ息をついて、メニューを取り出す。
「こちらがメニューになります。ご注文の際はお声をかけて下さいね」
「き、緊張しまつ」
「………わくわく」
外食、初めてでつねーと笑い合う子供らにホロリとなりつつ、ポコスはにこやかに子龍らに笑いかけ、メニューを広げる。
「あ、あの。声をかけるってどう言えば良いんでつか?」
不安そうに尋ねてくるルートに、ああ、とポコスは安心させるような、優しい笑みを浮かべて答える。
「どんな言い方でも良いよ。声をかけてくれれば近くの店員が対応するから」
「そうなんでつか、ありがとうございまつ!」
にぱっと笑ってメニューに目を落とすルート。その様子に笑みを浮かべてポコスは席を離れようとし、ふいにつくえに声を掛けられた。
「……どんな、言い方でも?」
「え、ええ。まぁ声をかけてもらっているのが分かれば」
不意の質問に驚きながらもそう返すポコス。
つくえはそう……とだけ呟き、
「あれくさんだー」
手を挙げ、まっすぐこちらを見ながら彼女はそう言った。
「……え、」
「あれくさんだー」
「いや、あのねつくえち」
「………なんでもいいって……言ったのに」
「……あ、いやその、ね」
ぼそりっと呟く少女に冷や汗を流しながら弁明しようとするが、少女は首を一度横に振り、
「あれくさんだー」
と再び口にした。
「……………はい。ご注文はなんでしょうか」
負けた。何故だか知らないが全力の敗北感を味わった気がしたポコスだった。
後日
「狙ったわけではありませんが予想以上に面白い光景でしたHAHAHA」
「うるさいだまれ泣くぞこら」
非常に疲れた顔のポコスに太陽が愉快そうに笑う姿がカフェで目撃されたとかされないとか。
とにかくあさまちはきょうもへいわである。
蛇足
「結局、あれくさんだーってなんでつか?」
「…………かっこいいと思って」