デートの待ち合わせ場所には、すでに白い服と、赤い袴。
 ―――五分前なんだけどなあ。
 嬉しいような申し訳ないような、どちらにせよむずがゆい気持ちで、彼女を呼ぶ。
 はい、と振り向いたその目じりには、うっすらと涙の痕があった。

なんてこったい

 蒼い目に、うっすらと浮かぶ水分。
 水分というか、涙。
   …涙!?
「――――そ、そんなに待たせましたか!?」
「? いいえ。今来たところです」
「じゃあなんですか! なにか例のアレに変なこといわれましたか! もしくは誰かしらに何か言われたとでもいうんですか!」
「風矢さん?」
 怪訝そうなこえに、不安が増す。
 やはりなにかあったのか。僕の所為じゃないならあれか。
 しかし例のアレは―――あれで小町さんのがいになること、しないからな。
 まさかとは思うが、例のなんかアホなナースなナーズとか。
 いや、あれからぱったりだからまさかとは。まさかとは思うのだが。
 …ああもう、なんというか。
「なにかつらいこと、ありましたか…?」
「風矢さん」
 問いかける声が不安で歪む。
 おちついてください、という声に頷けない程度に。
 そう、まったく頷けはしないのだが。
 ほんのすこしだけ頭が冷えて、少し黙りこむ。そして。
「一体何のお話でしょうか」
 改めて投げかけられた言葉に、こけかけた。
「何の話って、だって、君、涙…」
 それでもこけずに問いかける。
 彼女はああ、とうなづいて目じりをぬぐう。
「ごみがはいってしまったらしくて痛むのです」
 ―――…………。
 なんだろう、この言葉にできない気持ち。
「…高位龍がそのくらいで痛がるんじゃありません」
「申し訳ありません」
「謝るところじゃありません」
 なんか、猛烈に恥ずかしくなって。とりあえずいってみただけなんだから。
 気まずさを増すこちらの気持などしったことではないというように、彼女はいう。わずかに不思議そうな顔をして。
「ではどうすればよろしいのでしょうか」
 そんなものぼくがききたいところだ。
 …ほんとうに、どうしろってはなしですよ。こんな馬鹿な勘違いでうろたえて。
 馬鹿な勘違いで、馬鹿そのものなんだから―――…
「……笑いとばしてくれれば、それでいいんですよ」
 いやもうまったく。それくらいしかないでしょう。
 やけ気味に笑う僕に、彼女は笑わなかった。
 ただ不思議そうに頷いて、『心配をおかけしたならもうしわけないですわ』なんて。
 そんな言葉が出てくるあたり、本当に心配ですよと、本気で笑った。



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