傷口に塩を塗ってあげる


アニスとアレスが海で鯵を大量に獲ってきた。
おすそ分けしてもまだまだ余る量で、召還石経由で帰ってきた二人を見たときに絶句をしたのは仕方のないことだと思う。この子達どんだけはしゃいだんだ。。
流石に生ものを大量に渡すのもためらわれる。しかし食べ物を粗末にするのは良くない。
「そうだ干物にしよう」
家族会議の結果でたのはそれだった。
開いて洗って一時間ほど濃い目の塩水に漬ける。
「はっはっはー 傷口に塩をぬってあーげーるー」
「アホなこと言っていないで、干す場所の準備お願い店主」
アニスにつっこまれ、しぶしぶ裏庭に緩い傾斜をかけたネットを準備する。
程良く漬かった鯵を、傾斜をつけたネットに乗せて日陰に干すことしばし。
そろそろ一回裏返そうと干してある場所に行くと、魚達に熱い視線を向けるもふ子様が居た。
「……もふ子様?」
「……」
いつもは眠そうな目をパッチリ開かれており、きらきらと輝く瞳がとてもかわいらしかった。
穴があきそうな勢いで魚を見つめる姿におもわず声をかける。
「……少し持って行きますか?」
「いいんですかっ!?」
ぱあああ、と効果音がつきそうな笑顔に、ふと気がつくと半乾きの美味しい干物を10匹ほど渡していた。
渡したときに輝く笑顔を見ることが出来たし良いか、と思うことにした。



またある日。
アランと山に行ったら、何故か様々な動物たちに遭遇した。
「どうしてこうなった」
「それはあいつらの台詞だと思う」
木に吊り下げられ解体途中の雉と熊と鹿と猪を指差して冷静な発言をするアラン。
ちなみに周囲に風の結界を張っているので、血の臭いで他の獣を呼び寄せるようなことはない。
「他者を襲っていいのは、自分も襲われる覚悟しているものだけです。
 だから相手も食われる事は覚悟の上だよきっと」
「いやどう考えても本能だと思うんだが」
「襲われたら脊髄反射で反撃するのも本能です」
適当に返すとアランが(ああ言えばこういう)という顔をした。腹芸出来てないぞー
大体いくら大きかったとはいえ雉に襲われて動揺する龍もどうなのか、と鳥の羽がわさわさ絡まる黒髪を見ながら口にも顔にも出さずに思う。
野生のやの字もない彼を放置し、解体作業を再開する。
反射的にとはいえ、いただいた命を粗末にするのはよくない。だからこそ解体して美味しくいただけるようにしているのだ。解体は手早く慎重に丁寧に。
血も肉も内臓も丁寧に取り出して加工すれば色々素敵なお値段で売れるので無駄にはしません。
解体作業が終わりさてどうやって持ち帰ろうかと考えを巡らせていると、横から何か視線を感じた。
新手の獣か、と警戒して解体用の小刀に手をかけながら視線の方へと体を向ける。
そこにいたのは、見覚えのある明るい髪色の少女だった。
「乃亜様ではありませんか」
小刀から手を外しそう声をかけると、彼女は猪肉に注がれていた視線を此方へと向けて笑みを浮かべる。
「おお、真夜ではないか。息災か?」
「はいお陰さまで。ところで、なぜこんな所に?」
そう問えば、彼女はどーん、という効果音が聞こえそうな位胸を張って言う。
「肉の気配がしたからじゃ!」
「素晴らしい勘ですねー」
「はははは、褒めても何も出ぬぞ!」
高らかに笑いながらも、その視線は猪に絡みついている。そう、あれは獲物を狙う狩人の目だ。
「……実は持ち運ぶのに難儀しておりまして。
 運ぶのを手伝っていただけるのでしたら、その猪を差し上げますよ?」
「真か!」
ぱあああ、と乃亜様の表情が輝く。
「はい。労働の対価としてお受け取りください」
「感謝するぞ真夜。さあ、早う帰ろうぞ!」
うきうきにこにこそわそわと担ぐ準備を始める乃亜様の可愛らしさにほのぼの和みながら帰る準備を始めたのだった。

おまけ

「ところで真夜、この肉たちはどうする気なのじゃ?」
「一部は売って、あとはお世話になっている方たちにお裾分けしようかと。
 残ったら、カフェで焼き肉パーティでもしたいなあと思っています」
「そうか、そうか!」
「あ、でも肉の熟成の都合がありますし、今日ではないですけどね」
「そうか……(しょぼん)」
「これ終わったら朱音様の所で食事をご一緒しませんか? 追加報酬として御馳走しますよ」
「うむ、よきにはからえ!(にこにこ)」
「(かわいいなぁ)」



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