ある日。
「へい! そこの少年!」
 やたらと陽気でたとえるならば某123番地主人の愛する黒いジュースを愛飲しているのが似合いそうなナイスガイ☆に声をかけられる少年が一人。
 彼はあたりを見回し。
 偶然にも周囲にほかに少年と言えそうな者がいないことを確かめ。
 いやいやながらに、振り向いた。

ヘイ!そこの少年!

 その後、129番地にて。
「それでもらってきたのがコレなんだ」
「…ああ」
 なにやら関心したように頷く蒼い髪の少女ことアニスに、声をかけられた少年ことアランは短く答える。
 なにやら疲れたように、億劫そうに。
 ように、ではなく。実際に疲れた少年は、目の前にあるモノを見つめる。
 こんなもの欲しくはなかったが、押し付けられたのだ。
 こんなもの捨ててしまいたかったが、うっとうしいおっさんだったのだ。
 いわく―――…
 猫耳っていいだろういいんだよいいというのに僕の故郷には中々良さがわかるものがいなくてねHAHA!これを布教する新天地を探していたらいつのまにやらここにきていたがほら最初に本命というなの誰かしら女の子に押し付けるのはね。うん緊張するからね。だからこうまるで双子というかなんていうかに同じようなかわいい顔をしたおねえさんがいそうな君にこの神器をだね。渡して。あわよくば、装着……
 ―――……回想を途中で区切り、アランは首をふる。
 アレはうっとうしいおっさんではない。
 やたらと笑顔のさわやかな変質者である。
 とりあえず野放しにしてはいけない気がして、黒子に引き渡してきた。
 その後の彼のことは知らない。
 ただ、黒子に渡しそびれ。しかし後ほど証拠として求められると困るから捨てられない猫耳が残ったばかりだ。
「でも、もらってどうするの?」
「別にどうもしない。ただしばらくとってだけおく」
 証拠として、と付け足せば、ああそっかと頷くアニス。
 もしかしたらこの町ならあのくらい許されてしまうのではないかと思うが、念には念をいれてというやつだった。
「とっておくなら有効活用すればいいのに。ほら、例の劇とかで」
 疲れた心地で猫耳を眺めるアランの隣から、声がする。
 聞きなれた声に横を向けば、見慣れた悪友ことアレスがにこりと笑っている。
「変態から押し付けられたもんを?」
「確かにそのままは問題かもね。
 だからそれをじゃなくて。そういうものを、例の劇で」
 いや。これ以上主演がイロモノになるのは…
 アランが浮かんだ言葉を口にするより早く、アレスがぴっと指をたてる。
「アランが使ってみる」
「つけるか!」
 とてもいい笑顔―――否。
 揶揄の色を隠さない笑顔に、鋭く突っ込むアラン。
 期待通りの反応に、アレスは声を立てて笑い、理由を説明する。
「悪役にも新しい切り口が大事だねって真夜姉が悩んでたからさ。いいかと思って」
「よくねえよ。嫌だよ」
 こんな、ふわふわもこもこファンシーにリボンまで飾られている耳をつけたくはない。男の子のプライド的に。
 脳裏に楽しそうな笑顔の姉などが浮かび身震いするアラン。
 わざとらしいまでに肩をすくめて、アレスは続ける。
「似合うかもしれないじゃない」
「誰得だ」
「結構色々な層が喜びそうだけど」
「メフィ兄辺りも気にしなそうだが俺は嫌だ」
「アラン。新しい自分を切り開くって、素敵なことだと思う」
「いや。お前別にこんな耳をつけるかどうかに興味ないだろ。俺で遊んでるってやつなんだろ。これ」
「まあ、そうだね。僕も見ても面白くないから。
 でも、新しい切り口になりそうと思ったのは本当だし、真夜姉は面白がりそうだと思ったから」
 さらりと言えない言葉を否定できないアレスは、思う。
 ああやっぱり、あの男。
 別に何事もなく放免されるんじゃないか、と。

 ―――この後、彼の予想はばっちりあたり。
 勧め方がまずいと指導された猫耳大好きナイスガイは、とても紳士なカチューシャ屋を始める。

 当然ながら、元々カオスな朝の生まれた場所では。
 そう目立った店にはならないことは、語るまでもない。

「つまりフラグがたったわけですよかなた様」
「ひぃ真夜さんが見えないなにかと会話をしてる!?」

 ―――いろんなカオスを抱きしめて今日も朝の生まれた場所は平和です。



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