ルピナス。
植物の一種類で、マメの仲間である。
紫色の花が空に向かって咲く様子から、別名を「昇り藤」とも言う。


貪欲な君にルピナスを


特徴:吸肥力が非常に強い。
痩せた土地でも繁殖し大地を荒廃させると考えられたことから貪欲な狼に例えられることもある。
実るマメが非常に苦く、食べると悲しい顔になってしまうというので悲哀の象徴のように言われたりもするらしい。

「…私に?」
「はい」
鉢植えを差し出したポーズのまま、こくりと頷くアプエゲ。
重そうなので、取り敢えず受けとる。
改めて間近でしげしげと眺めるが、それはやはり昇り藤だった。
花屋の店頭にでも置かれていたのに目を引かれて、といった所だろうか。
この植物の名前の由来など、彼は勿論知らないのだろう。
知っていて嫌味で寄越すようなタチでもないだろうし、何よりトゥエルヴにはアプエゲにそんなことをされる憶えは無かった。
「買って来たの?綺麗だったから?」
「はい!」
「私じゃなくて、この花のことよ」
「え、あ、はい」
冗談、というかツッコミ待ちのつもりで言ったのだが、アプエゲはどもって頷いた。
とすると、トゥエルヴのことと思って返事したのか。
思わず照れる。素直な、擦れていない反応に頬が緩む。

「ここがいいわね、日も当たるし」
ことり、と、取り敢えず出窓に鉢植えを置いてみた。
殺風景だった部屋に出来る彩り。紫色の花は、まるで最初からそこにいたように馴染んでいる。
「大切にしてくださいね!」
「あ、うん」
贈り主の発する、力を込めた科白にたじろぐ。
別に粗末に扱うつもりは無かったが、そういうことは貰った方が言うものではなかろうか、普通は。
面食らった後に、じわじわとおかしくなってきた。
「…まだまだ子供ねえ」
「ええっ!?」
突然の子供扱いに、今度はアプエゲがたじろいだ。
何やらショックを受けているらしいその様子に、トゥエルヴは声を上げて笑う。
「ま、ありがとね。私にはお似合いの花だわ。あんたにもね」
「ええー…?」
納得し難いというような声を上げるアプエゲ。
トゥエルヴは何も言わず、ぽんぽんとその頭を叩いた。

女なら花が好きだろうという「勘違い」。
よりによってルピナスを選んでしまう「間の悪さ」。
男としてはまだ初心だ。
だけどそういうのも悪くない。
珍しく、そんなことを考えていた。



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