わかりあえないことをどう呼べばいいだろう。
わかりあい、わかちあうことのない、隣同士。
二人でいるのに、これではまるで―――
―――それは、遠い昔。ある闇竜が一度目の命を過ごすころ。
傍らの赤か、彼女自身か。
どちらかが呟くことなく消えた、みえない独自。
孤独な君にエリカを
美しい花畑を、一人の少女が歩く。
一人、否、一体。
人ならざる可憐な少女は、薄紅色の中で赤色の傘をくるくる回し、静かに歩を進める。
日傘に守られた肌は白く、わずかな風にそよぐ髪は赤い。
美しい花畑の中を歩く、その少女は美しい。
くるくる。くるくる。
傘を回して歩く少女は、そのことを自覚していた。演出しているといってもいい。
くるくる。くるくる。くるり。
一人歩く少女の姿は、美しく愛らしい。
晴れた空のした、花と日傘と、麗しの少女。
他の要素を必要としないほどの美しい光景に、それでも近づく影が一つ。
花畑の向こうから歩いてくる、黒い髪と服の青年。衣装のところどころがすすけているあたりと、どこか疲れたような表情が、そんなところから出てきた意味を物語る。
こちらに気づき、当然のように歩みよってくる青年に、少女はかすかに笑う。
また拉致されていたのだろう。謎の理由で、彼の兄に。
そんな心地を胸に秘め。
「お疲れのようね、フェレスさん」
「疲れたっていうかなあ…」
いつあのひと僕にかまう以外の生きがいみつけるかな。
なんともいえない顔でつぶやく青年。
慣れたその顔はすぐに消えて、彼の丸い瞳に疑問の色がともる。
「火乃香はなにしてたんだ? こんなとこで」
「お散歩ですよ。美しい花と空をめでていたの」
ふぅん、と気のない返事。
それを気にすることなく、少女はころころと笑う。
「絵になるでしょう?」
「…まあ、そうかな」
うなづく青年は、だからなんだといいたげだ。
こんなところで一人絵になってなにをしたいのか。そんな風な反応。
その反応に、少女は笑う。
特に意味なく、ころころと。それでもやけに上機嫌に。
「美意識に関することでフェレスさんに同意されてもうれしくはないので、わからなくとも構わないですけど」
見てるほうが不安になるような絵を生み出して、常に微妙なコートを愛用する方の同意なんて、ねえ。
声に出さない言葉が聞こえたように、青年は眉を寄せる。
「そりゃ分らないけどな」
「ええ、そうでしょう」
頷く少女に、青年は何も言わなかった。
それでお前が満足ならいいだろう、などというセリフも。
僕には関係ない、という拒絶も。
たわいない会話を続けながら、時にとぎれさせながら。
赤色と黒色は、隣に並んで歩いている。