「やあやあ者共。ぽっくん、名をルートと申すケチな三下でやんす。意味はわかりまちぇん。」
一踏み、地面をならし。二踏み。腰を落として。ぴしり、と左手は腰に、右手は斜め前に開く。
きりっとした彼の表情に迷いは無い。
「………はっ」
「相も変らぬセメントっぷりありがとうございまちゅ。業界ではご褒美らしいでちゅ」
つくえの失笑にもめげず、今日もルートは頑張って生きていく。第三部完!
「HAHAHA!私の後継者がここに」
「良く最前列なんて取れたなぁ」
アメリカンに笑う白衣の男に、咲良は無言で拳を打ち付ける。太陽は何故か蹲って黙り込んだ。
「oh……」
「見事」
脇で見ている子供たちが尊敬のまなざしで見てくるのが何だかこそばゆい。
《ブーーー。皆様、お待たせいたしました。只今よりTHEカナリアンショータイム第36幕を開始いたします》
「口で言うのかよ。ほら、お前たちもちゃんと席に座るんだぞ。舞台中は勝手に立っちゃダメなんだから」
『はーい』
アナウンスに突っ込みを入れるも、もちろん返答は無い。
周囲を見ても特に疑問に思っている人もいない。自分が特殊なんだろうか。
「子供たち。ポップコーンとコーラは用意したかな?」
「演劇でそんなものを………いや、いいのか?」
「見たいように見るがジャスティスですからね」
「……何気に、兄が即効復活しててびっくりでつ。さっき首が一周回ってた気がしたんでつが」
「…………地龍は……早い。何がとは、言わんがな」
「回復がでつね。わかりまつ」
右手にポップコーン、左手にコーラを装備してどう食べるんだろうとは思いながらも、まあ人それぞれか。と納得をする。
飲み物くらいは買っとくべきだったかなぁ、と少しの後悔を覚えていると、ふいに劇場内がぱっと暗くなる。
そして、今日のカナリアンショーが始まった。
ここからはダイジェストでお楽しみください
うー、遅刻遅刻。食パンを口にくわえて走る私はごく普通の女子学生。強いて違うところを上げるとすれば、怪人に狙われやすいって所かな?
あれ?あそこに落ちてる宝石は何かしら。キラキラ光ってまあ綺麗。黒子さんに届けないと!
「きーっきっきっき。そこのこむ……おいまたお前か。どんだけ運が悪いんだ」
あらわれた黒服の男の子に心底かわいそうなものを見る目で見られた。死にたい
「怪人に残念がられた!ちくしょー役どころのせいだい!」
「うん、わかった。茶々ちゃんの役どころについては後で姉に言っとくから。とりあえずそれ、渡してくれる?今なら飴ちゃんあげるからさ」
「……りんご味なら」
持ちかけられる悪魔の取引。魅惑の果実に私の心がとらわれそうになったその時!
「まてい、アラーン!この神父仮面の目が黒いうちは、好き勝手にはさせないぞ!」
「むむっ、仮面で目の色なんて見えないのにこの堂々たる物言いは神父仮面!ぽちっとな」
「あうっ!」
登場した瞬間に罠に係り、何だか凄い勢いでロープに絡め取られる神父仮面様。
「ふふふ、そこで生まれでも呪っているがいい!あ、飴ちゃん流石にこんなには。。。もうちょっと負からない?」
「…………レモンがつくなら許す」
「シャイニングチェンジ!」
そして銀色の光が夜空(のような舞台演出)を切り裂き、フリフリのドレスを棚引かせて、美魔法少女戦死が光臨する。
「愛ある限り戦いましょう。空に月があるかぎり。美・魔法戦士少女カナリアン! 参上!」
『カナリアーン!頑張ってー!!』
「ありがとう、子供たち!貴方達の愛、確かに受け取ったわ!さあアラーン!今日こそ逃がさないわ!」
「おのれ、カナリアン!後2個で話がつくはずだったのに!くっ、こうなったら!!」
ばっと私の陰に隠れるアラーン。はっ、まさか私を人質に!?
「ゆけい怪人残念少女!あれを倒せばお前が主人公だ!」
「ちょいまてやごるぁ」
思わず少女が出していい声ではない声音が出たがしょうがないよね!
「………とりあえず切ればいいか」
「あんた辻斬りですか!?」
「ひ、ひぃぃぃぃ!煙幕!」
ぼふんっ、アラーンを中心に煙幕が上がり、舞台を包む。
「逃がすわけないでしょうがこのストレス解消機!」
「ちょ、おまっ」
「待って待って私は被害者!被害者で」
「問答無用!一刀両断!」
スパァン、と必殺の斬撃が舞台を覆う煙幕を貫く。
「あーれー」
「なんでわた………あれ。切られてない」
「一刀両断で花は斬れんのです。悪は滅びた!でもまた取り逃がした!!また来襲もカナリアン!!」
頭を抱えて蹲るカナリアンはぶつぶつと少し何かを呟くと、キャラを立て直して笑顔で子供たちに手を振り、
「みんな、今日も応援ありがとう!カナリアンショーまた見てね!」
「あの……そろそろロープ外してくれると……痛くて」
そして舞台が幕を閉じる。
「うーむ。カナリアンは斬鉄剣の使い手だという説が増えた。これは由々しき事態。ルート、ノートに纏め終わった?」
「もちろんでつ。今日の服は菫色のミュールが新装備でちた!今日も考察で忙しいでつね!!」
子供2人が一生懸命メモをとっているのを横目に、私はちらりと太陽を見た。
凄くイイ笑顔なので、とりあえずこの後カフェに行くと酷い場面を診る事になるかもしれない事は理解する。
………ダージリン。私頑張って応援する。
……あのフリフリの服、意外と可愛かったと思ったのは内緒である。