店先で見つけた、菫色のミュール。
 あ。似合いそう。
 そう思ったら、手が伸びた。
 伸びて、触れた。
「………」
「………」
 店先で見つめあう、二人の男女。
 正確には、一体の地竜と、一人の少年。
 脳裏に同じエルフを描いた彼らは、重なった手をそのままに見つめあう。
「…買うのか」
「…ええまあ。贈り物にどうかと」
 さっとどかした手をふりながら、問う少女。
 少年はどこか気まずそうな笑顔で頬をかく。
 その反応に、少女はぐっと唇を引き結ぶ。
 なにをいうか悪霊が。(主人に害をなすものの意)
 少し前なら確実にぶつけていただろうその言葉も、今はなりをひそめる。
 どうやら、害をものではなかったわけだし。
 というか、付き合いはじめたわけだし。
 もうその言葉はふさわしくないわけだ。
 しかし。
 しかし、と彼女は思う。
 それでも、なんとなく面白くないというか。素直に譲りたくないというか。
 それでも彼女は、彼に贈られた方が喜ぶのだろうか。
「どうかと思っていましたが、どうぞ。咲良さん」
 とか思ったところから、そんなことを言われる。
 

菫色のミュール

 



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