気まぐれに覗いた露天商で、目を引いた空色。
綺麗な色だ、と思ったら買っていた。


空色の君


「と言う訳で夏ですし新衣装に空色の水着なんていかがでしょうか。
 いつもの町というステージを飛び出して海で映画撮影してロードショーです。
 主題歌はフェレスさんとリーヴァさんなんてどうでしょうかかなた様」
「唐突過ぎて訳が分かりません! 真夜さん、落ちついてもっと詳しくお願いします」
「夏なので海に行くついでにカナリアンの撮影やったら楽しそうだと思いまして。
 あと水着用の布地で可愛いのが手に入ったので磨智嬢に見てもらったら素敵なデザインをして下さったのでこれは是非使わないと、という使命感に駆られまして」
「磨智と結託して何やってるんですか! そんな使命感ポイして下さい!」
「因みにデザイン料はちゃんとお支払いしています。新しいレースやフリルが色々買えるって喜んでいましたよ」
「それは良かった……のかな?」
「メーさんに似合いそうなものが色々あったとか」
「ごめんメー、マスターは無力だわ」
「と言う訳ですので海に行きましょう。撮影機材はパッチー様経由で太陽さんにお声をおかけすれば万事OKです」
「カメラなんて潮風に当たって壊れてしまえばいい」
「潮風に負けないカメラなのは前回の『Chaos』で証明済みです」
「そんな証明欲しくなかった!」
「大丈夫です。かなた様はちゃんと出る所出てますし引っ込む所もひっこんでます。脱いでも問題無しです」
「褒められて嬉しいですが嬉しくないです!」
「水着生地なので濡れても平気なだけで、露出とフリフリは少なめですよ?
 ある程度は体のライン出ますけど、それはいつもの衣装も同じですし」
「……確かに露出とフリル少ないですね。意外です」
「放映後そのデザインで子供用水着を作って売ろうかと計画しておりまして。
 子供がターゲットなので、露出少なめの方が安心ですし。フリル多いと動きにくいじゃないですか」
「さらっとビジネスの話でた!」
「女児向けはこれで良いとして、問題は男児用です。
 カナリアンは男女ともに非常に人気があるのでそっち向けも何かしら考えたいのですが」
「真夜さんってそんなに商売っ気ありましたっけ?」
「これでも大商人ですので。
 乾様にも黒の水着着用を一度提あn「仮面に海パン1丁って何処のHENTAIですかっ!?」
「あらこんばんわです乾様」
「こんばんはー ぶるーたすおまえもか、です」
「いやだなあ流石に冗談ですよ?
 どうせやるならアランにやらせますよ。エルヴ嬢にも水着着て欲しいですし。
 悪役側にもしっかりファン居るんですよねー」
「その真剣な目が怖いです何処まで本気か分かりません」
「全部と言ったら受けてくださいますか、乾様?」
「全力でお断りさせてください! かなたさんも止めてください!」
「……水着着ても構いません」
「ほらかたなさんも……って、え?」
「え、本当ですか!?」
「ええ。ただし条件があります」
「条件ですか?」
「真夜さんも出演してお揃いを着てくださるなら良いですよ」
「………………まってかなた様。これ年齢制限ありますから」
「大丈夫です私に着られて真夜さんに着られないはずはありません」
「いやこんなフリフリな水着は私のアイデンティティーに反しますから」
「あいでんてぃてぃーなんて捨ててしまいましょうそうしましょう」
「かなたん様目がマジで怖いですって落ちついてびーくーるびーくーる!」
「大丈夫です落ちついています。毒を食らわば皿までって言うじゃないですか」
「お皿食べちゃだめですぺっしてください!
 第一、私は以前悪役で出てさくっと成敗されたじゃないですか。出演は無理です」
「そこはほら、悪役から正義へと目覚めた事にすれば良いんです。
 寝返り枠はまだ空いていますよね?」
「空いていますが、空いていますが!!」
「空いてるなら問題ないですよね」
「ありまくりですっ! 出演とシナリオと監督って私死にます! 主に羞恥心的な意味で!」
「大丈夫です乾さんや羽堂さんがいるので蘇生はしてもらえます」
「死亡前提ですか、かなたん様ひどいっ」
「あだ名に様がつくと違和感凄いですね!
 毒を食らわば皿までです。大切なので二度言いました!」


* * * *


「あいかわらず熱いわねー」
「……エル姉、俺達水着着ないといけないのか?」
きゃわきゃわと言い合う二人と、じりじり二人から距離を取ろうとする乾を見ながら優雅にカップを傾けるトゥエルヴ。
どんよりとした表情を隠そうともしないアランに、トゥエルヴはくすくすと笑う。
「水着の上にパーカーは着させてもらえると思うわよ。
 海の家で活動資金稼ぎ中にカナリアンに遭遇して襲撃するとかいう導入だったと思ったから」
「シナリオまで出来てるのか……」
「げんなりした顔しないの。導入とやりたい事と落ちは決まったからあとは人員決めてそれに合わせて話組み立てるって言ってたわよ」
「やりたい事?」
「『アーニキー』『待たせたばーい!』とかやりたいとか言っていたわ」
「あいつはアホなのか。アホなんだな。なんでそんなにアホなんだよ」
「熱いこだわりがある事は良い事よ多分」
じとっと座った視線を契約者に向けるアランから視線をそらすように明後日の方向へと向けるトゥエルヴ。
そんなこんなで、カフェの夜は更けてゆく。
海での映画撮影はどうなったか、キャストはどうなったかは、時が来れば分かるかもしれない。
噂では。
鮮やかな空色の水着はそれなりに良い売り上げを叩きだし、デザイナーに追加報酬が払われ。
主題歌である「空色の君」は住人の二人に一人は持っている程度には売れ。
数量限定で作成された、表面に「アニキー」裏面に「待たせたばーい!」と筆文字で力強く書かれたTシャツが完売したらしい。

お粗末さまでした。



back