魔を避ける
それは恐れるもの達が、
神を生み出すよりも先に、
唯々最初に生み出した行為
耳に銀を身に付け
夕方には外に出歩かない
九字を切り、心身を戒め
そして、護符を持ち災いを避けた。
緋色の魔除け
「という訳で、魔を避けるため、人々は信仰に力を求め、力ある信仰が魔を、そして人を退ける効果を持つようになったのです」
えへんと胸を逸らす紫もや…いや、どこをどう見てももやしには見えないエルフがカフェでつぶやく。
引きつった笑いを浮かべるのはカフェメンバー。
一人怒りのマークを頭に浮かべてもおかしくない銀髪の従者は思い人と共に今は地球の裏側か、はたまた朝町を出てる直前にハプニングか。
「魔が嫌うものと言えばまずは銀。他にもいろいろありますけど、色で言えばやっぱり赤ですよね〜」
「生きるものの証は、いつだって羨ましいもの。魔を避けるのと同時に人の心身を高めて魔を引き寄せないようにするのでしょう」
無表情でつぶやくのはイソレナ。
片手で器用にビンを開けるとそのままビールを飲み始める。
顔色は、つぶやいた通りの赤色…ではなく明らかに飲みすぎて変わらないはずの顔色が白くなり始めていた。
「で、イソレナさん…」
引きつった笑いで手を挙げるは乾。
沈黙を保ち続けてきたが、ほかの人が声を上げることができなくなりついに口火を切ったらしい。
「どうして、その緋色の大鎌構えてるんですか」
カフェの人数はいつもの通り。先に上がった羽堂とイソレナ、そして口火を切った乾と、既に物言わぬ屍と化してしまったパッチー。
引きつった笑いを浮かべる朱音、かなた。そして、下をむいたままぴくりとも動かない真夜である。
始まりは、いつも通り。カフェで、いつもの人間が揃って、楽しくお酒を飲み、笑い、語り……。
そして、気がついたらパッチーが物言わぬ死体となっていた。それだけである。
凶刃を振るった張本人は今もなお白くなりつつもお酒を飲むイソレナ。
その右手にはイソレナ愛用の禍々しい緋色の血吸い鎌。
血を吸いその緋色が更に禍々しく映る。
「……なんで、こんな話になったんでしたっけ?」
引きつった顔から既に半泣きになりつつかなたがそうつぶやく。
頭の中ではなんで私がこんな目にと、常はまだまし……かどうかもわからないが、会話は通じるハズ隣人に振り回され呟きを漏らす。
「えーと、確か、この間の真夜さんの件で、お守りって大事だねーってところからでしたねー」
引きつった笑顔…と思いきや、案外普通の朱音があっけらかんと言い切る。
少女の霊に憑かれて(?)体調を崩した真夜を、乾が祓った(?)件は記憶に新しい。
やはり護符やお護りって大切だねという話が……
「……どうしてこうなった、というよりもうこれは……」
かなたのつぶやきは誰にも聞こえない。
ケラケラ笑っているのは羽堂のみ。
ふふふふっと不気味な笑いを浮かべるのは一線超えちゃった鎌使い。
困りましたねぇはっはっはと、パッチーが起きていればそう笑うであろうセリフを取るのは朱音。
そして二人、唯々引きつった笑いを浮かべる乾とかなた。
かなた言葉の後半は聞き取れない。
そう、呟きたかった、「……絶対、緋色の魔除けというより、緋色の魔物…ですよね」という言葉は……
つぶやきを聞いたわけでもないが、みんなの心の中の声を、何処かより聞いたように、
ただ一人、うつむきながら、真夜のみ小さくつぶやいた。
「ちくしょー、あんなことつぶやかなきゃよかった……」
真実は、いつも闇の中に……