「「あ」」
伸ばした手と手が触れ合い、互いの存在を知覚する。
少しの思考。そして顔を上げると、そこには見知った友の顔。互いに視線を絡め、数瞬の間、見つめあう。
そして、唐突に理解した。
これから、自分と彼が何をするのかを。
これから何が始まるのかを。
そして、互いの目が細く鋭さを増す。理解していても止めることは出来ない。
意地があるのだ。男の子には。
「この焼きそばパン。俺のものですよね?」
言葉を先に発したのは赤い男だった。
「寝言はベッドの中でどうぞ」
青い男は言葉と共に剣を抜く。
YU−JO?ああおやつだっけ?と言わんばかりに店内で殺気を撒き散らす二人は、少なくとも数瞬前まで友人関係だったとは思えない形相であった。
「パッチーさん、イソレナさん。うちの店内でやるなら出禁ですから」
『YES、MUM』
厨房から聞こえた朱音の声に睨み合いながらそう答え、ふっとイソレナが視線をはずしてドアの外へ向かう。パッチーもそれに続き、二人がドアの外へ出た。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
地響きのような重低音が響く。
「こ、これは荒気音!?」
「知っているのか!雷……ポコス!」
「……いや、振った自分が言うのもなんだが。咲良毒されてないか、それに」
「キコエナーイ」
「毒食わば皿までといいますからなぁ」
したり顔で頷く太陽の膝につま先蹴りを入れる咲良。何だかなぁと頬をかいて、ポコスがふと窓の外を見る。
そこには、両手にもった武器を十字に構える二人の漢の姿があった。
「いつからしゃもじが二刀流になってるんです?1本で届かないから2本、は少し単純すぎませんかね」
「バーサーカーの豪力をお忘れなく。そちらこそ振り回されないうちに一本捨てたらどうですか?」
「ハハハハハ………」
「HAHAHAHAHA………」
互いに笑いあい。そして、唐突に訪れる静寂。
ぴたり、と。音がしたかのように突然、空気がとまった。
二人は笑顔のままだ。楽しいと心のそこから感じている。そう表情が物語っている。
ただ。彼らは楽しんでいるが会話を楽しんでいるわけではなかった。それだけの話なのだろう。
戦う生き物としての本能が、ポコスにその感情を少しだけ理解させる。
あれらは、殺意を、自分の殺意を受け取った相手の殺意を楽しんでいる。
彼らは睨み合って立ち止まっているが、恐らく何度と無く切り結び、そして何度となく切り裂き、そして切り裂かれているのだろう。
彼らの頭の中で。互いのわずかな動きに反応してブレる用に動く二人を見ながら、ポコスは感心するようにため息をついた。
強さを求める龍の、根っこの部分の琴線に触れたのだろうか。
らしくない、と頭を振って紅茶を飲む。
「………なんだよ」
「いやぁ。珍しい表情が見れましたねふぁっふーなんて思っていませんですとも」
「ひゃっふーだぞ、太陽」
「お前らもう黙れよ」
砂糖を吐きそうな顔でそう呟くポコスに、太陽は両手をひらっと広げておどけて見せると、ちらりと後ろを振り向く仕草をした。
釣られてそちらを見ると、怪しい格好をした見知った人物が頬を上気させて剣を抜いていた。
「………カナタサン?」
思わず声をかけたポコス。ポコスの声にびくん、と肩を揺らして、あやしい仮面をつけたかなたは振り返る。
「はっ!?か、かなたって誰のことかしら?私は美少女戦死カナリアン!て違うこれ没バージョン!」
夜鍋してこさえた登場シーンがっ!夜鍋してこさえたんですかかなたん!そんな貴女が大好きです!と慌しく動く美少女(笑)戦死と別の意味で頬を上気させる飲食店経営者を尻目ににやにやと笑う太陽。
「太陽のせいか」
「太陽のせいだな」
「何でも私のせいにするのは止めていただきたいものです。私が誘導しましたが」
タイマンに混ざりたい時にはどうすればいいだろう
回答:正体を隠してけばOK
「いやその理屈は可笑しい」
「でも多分何とかなりますよほら」
――むっ、何やつ!?決闘を邪魔するか!?
――その決闘。確かに素晴らしいが世界じゃ二番目だ!もう一度言う二番目だ!
――ほほう面白い!纏めて切り裂いてくれるわっ!しゃもじ・クロスソード・ハリケェェェン!
「普通に混ざっても良かったんじゃないかと小一時間」
「略。」
「ポコスも大分毒されてますねぇ」
しみじみと語る朱音の言葉に、うんうんと頷く太陽。
今度は二人掛りで蹴られたのは、言うまでもない。
「………朝町は……今日も平和ね」
「この惨状を見て平和といえるつくえちゃんに戦慄を隠せないルートでちた。」
オチなし?
あとがき
出オチが書きたくて