2度あることは、3度ある。
 そんな言葉を耳にしたことがある。
 ならば、これは3度めなんだろーか。
 赤い水たまりに浮かんで、見せられないよ!(ぐろさ的な意味で)みたいなあり様になった自分の死体を見つめながら、私ははあと息をついた。
 息をついて、そうして。自分をじっと見てくる目線に気付く。パッチーさんだ。
 蒼い顔で認めたくないなにかをみるような彼は、先ほどまでの戦闘相手であり。思いうかべた『2度』の記念すべき1度目で。2回目と3回目が私…で、2度目は、倒れた。というか、1度目には私が倒れた。お互いホラーが嫌いだ。
 しかし、何度も驚かせてしまうのは申し訳ない。ここはひとつ、おちゃらけてこの凍りついた空気に喧嘩を売ろう。戦闘系らしく。それが友情というものだ、たぶん。
「…『幽霊だけど質問ある?』」
 出来る限りのいい笑顔を浮かべて、どっかで見たなにかのタイトルを告げてみた。
 パッチーさんは2度目と同じように、名状しがたい声をあげて倒れた。
 わりと当たり前の気がした。

みずたまり

「…復・活!」
 そんな風にパッチーさんは起き上がった。
 気を失われたパッチ−さんに気付いたダニさんが、コーラを顔面にかけたからだ。
 …コーラを。
 気付けのコーラらしいです。
 気、つけられるんだ。
 気、つけられるんだ?
 まあ、パッチーさんだしなあ。パッチーさんにコーラという組み合わせは色々と奇蹟を起こすからなあ。パッチーさんなら、しかたない。
 コーラ万能説におののく私は、そっと囁いてみた。
『してみたいことがあるんです…』
「盆踊りですか。幽霊なのにあえて盆踊り」
『いえ…』
 なんかおもしろいネタふってくださるパッチ−さんに頭をふって答え、私は呟く。
『私の死体が転がっているときのうちの龍達の反応がみたいんです』
 それは、戦闘系なら。いや、死んだことのある朝町住人なら、一度は気にしていることだと思う…!
『反応を見た見たいんですよ! いつも大変大変言うけど、本当にそんなたいへんなのか!』
 ぐぐっとにぎりこぶしをにぎりながら、私。
 なにやら神妙な顔になられたパッチ−さんは、ゆっくりうなづいた。
「ということは、この場合、この死体は…」
『ということで、運んでほしいんです』
「…運ぶ…」
『私をお家につれてって☆』
 パッチーさんはやっぱり面白い感じの悲鳴を上げて倒れた。
 わりと無理もない気がした。


 まあ、それから色々とあったんだけど。無事(?)に帰路について、草むらに隠れている。みえないかもしれないけど、見えるかもだし。念には念をというやつだ。
 ちなみに、とった手段は、台車。台車に乗せられ運ばれる私。運んでくださったパッチーさん。報酬は家にもあるコーラ、かけつけ一杯と言わず3杯四杯と。
 私が話しかけなければ蘇生につれていくのと同じだから構わないといってもらえたのだ。
 …それにしても。
 ああ、なんかこう。いつも色んない人にいじられてばかりだと。 ここで『さすがパッチーさんそこにしびれるあこがれるう!』とか言ったらまた驚いてくださるんだろうなあ、って。すごく…気になります…。
 運んでくれた人にそんな狼藉はできないけれど。しないけど。でも。
 内心葛藤している間に、足音が響く。ひょっこりと顔を出すと、緑色の髪が見える。なにやらうきうきした様子の、風矢だった。
「楽しそうですね」
『ええ。
 彼は白くて可愛い例の彼女に会いに行くとき、廻りに点描が見えるんです』
「ははあ青春ですねえ。ハンカチかむところですか?」
『きぃぃ!ですねえ…』
 そんなリア充な風龍は、私の死体に気付いて、なんだか嫌そうな、ちょっと困ったような顔をした。
 そして、なにやら考えるように視線を彷徨わせて…歩いて行った。
 さすがに先程のように軽くはない、けれどどこかしらいそいそした足どりが、彼がなにを優先したかを物語っている気がします。
 遠くなる背中に、私は思わず叫んだ。
『この色ボケ風龍があああ! 呪ってやる祟ってやる君の枕元で般若心境かみながら読んでやるう!』
「かなたさんかなたさん。身体に戻れなくなりそうです! いつまでそのままでいるつもりなんですか!」
 というかホラーなことを言わないで下さい! そういってくるパッチ−さんがほんのり青くなっていたので、口をつぐむ。
 ああもうくそう。知っていたけどすがすがしいよ、あのいろボケ風龍。どんだけこ小町さん限定の良心よ。
 などと思っていると、またひびく足音。
 とてとてと歩いて来たのは、買い物帰りっぽい炎龍二人だ。
「あ、かなた…」
 地面にころがる私を見て、ヒナは少し残念そうな顔をした。
 そして、ベムに向かって僅かに向き治り、
「なあ、今活動できそうな聖職者さん、覚えているか」
「最近、蘇生できる状態の人、少ない。通って来たところには、いなかった」
「だよな。しかし、復活の書もないし…」
 残念そうな、みようによっては哀しげな顔のまま、彼女は大きくうなづいた。
「……まあ、夕飯までには起きるだろう。かなただし」
「なら放っておこうか」
「ああ」
 うなづいて納得して、お家に帰って行きました。
『…………くすん。くすん。くすん…………』
「かなたさん。あめちゃんいりますか」
『今なめれませんですよ…』
 そして甘さで哀しみは癒せるときと癒せないときが。いや、哀しいっていうよりやるせないこの気持ちはなにかしら、みたいなっ!
 打ちひしがれてみたりしていると、またまたみはからったように足音がひびく。こっそり除いた先に見えたのは…銀色の髪と茶色の髪。
 メーは私の死体に気が付くと、多いに嫌な顔をした。
「…かなた…」
 嫌な顔のまま歩いてきた彼は、よいしょとかがみこむ。  同じようにかがんだ磨智は、私の顔についた汚れをはらい、軽く溜息をついた。
「また負けたんだねえ。迎撃失敗?」
「またってお前。すごくいつものことだけど本人に言うとへこむから言うなよ」
「君、たまにそれよりきついこといってるけどねえ…。どうしよう。手元に蘇生手段ないよ」
「あー……そっか……」
 嫌そうに、悲しそうに、呟いたメーは、少し遠くを見るような眼差しをつくった。
「どうせ負け犬なんだから命かけてまで戦闘しなくてもいいのに……」
 負け犬いった。
 すっげえ哀しそうな顔で負け犬いった。
 他に言いよう…ある…よね………?
 ……う。
『うあああああん! 君なんてへたれのくせにぃ! へーたーれーのーくせーにぃいい! 出てってやるう! さ迷う幽霊になってやるう! 井戸でお皿を数えて1枚足りませんっていってやるううう!』
「井戸には誰もいませんよ。じゃなくて、皿は関係ありません!」
『私が住んで怪談になってやるぅううう!』

 その後、ひとしきり叫んだり叫ばなかったりパッチーさんが倒れたり倒れなかったり、したけれど。私は無事に蘇生を果たした。
 それでも残る、胸の辺りの鈍痛。

 うちの龍はあんまり忠義がありません。
 いや、なんというか、こう……別に……求めているわけでも、ないんだけれど……

 いただいた飴ちゃんを口に放る。
 不思議としょっぱい気がして、少し目の前がかすんだ。



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