先日、太陽が通販で買った鎧がある。デュラハンが憑いていたという曰く憑きのそれは今、パッチー家の居間に安置されている。
「これは・・・和式の飾り方ですよね?」
「こまけぇこたぁいいんだよ」
「・・・・・・」
「・・・すみません、つい、言ってみたかっただけでしてはい」
つい先日、一部で騒ぎになったこの鎧。今は勝手に動き出す、などということは無いが聖職者として一応確認しておこうと見に来た乾と、面白そうだからとついてきたイソレナ。これに家主を合わせて俗に男闘呼組と呼ばれている面子は居間で茶を飲みながら談笑していた。
「呼ばれてませんよ?」
「すみません」
「ふーむ・・・・・・確かに邪念は感じられませんねぇ・・・・・・」
乾がぺたぺたと鎧に触りながら呟く。この鎧からは村に居るデュラハンのような。寄らば斬る、と言わんばかりの殺意がない。
あのデュラハンも、話してみると意外と良い漢なのだが・・・
「パッチーさん、ちょっと調べてみてもいいですか?」
「私はいっこうに構わあ、痛い、痛いですイソレナさん」
「ちょーっと自重しましょうねぱちさん」
恐らく問題は無いと思うが、妙に気になる。懐から聖水を取り出し、鎧にかける。
聖水は鎧の表面を伝い、隙間から内部に染み込み
ミギャー
・・・・・・・・・・・
ドドドドドドド、と男三人が飛び退くように鎧から離れた。
「今の、もしかして俺のせいですか?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、と効果音を放つ鎧を指差して、乾が引き攣った笑いを浮かべる。
パッチーとイソレナは空気を読んで親指の腹を見せる。ウィンクもつけて。
「ぱちさん、武器はどこにあります?」
「森羅万象全てが我が武痛、痛いですすんません」
「今日のパッチーさんはハイテンションですねぇ」
二人は武器を構えて壁になり、家主の前に立つ。非武装でモンスターに突っ掛かれるのは一部特異な人だけだ。
ギシッと間接部を軋ませながら、鎧が立ち上がる。動きは非常に鈍い。生まれたての小鹿のように震えながら歩き出し、足が縺れてドンガラガッシャーン、と音を立てながら倒れた。
「・・・・えーっと。」
鎧は起き上がろうともがくが、途中で力尽きたのか床に倒れこむ。そして、暫くはギシギシと体をゆすっていたが、暫くして動かなくなった。自重で立てなくなったらしい。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・どうしましょう?」
「・・・・・・・出落ちって奴ですかね」
余りに予想外な状況に、男闘呼たちは躊躇いがちに鎧に近づき、つん、つん、と突いてみる。鎧がすすり泣き始めた。
「・・・・・・彷徨える魂よ、神の御許へ・・・」
乾が顔を引き攣らせながら言霊を呟く。すると、啜り泣きが少しずつ薄れていく。あの世へ送り返したらしい。
「ビックリしましたね・・・・・・」
「自分の重さに耐え切れないモンスターって・・・初めて見ました」
イソレナの言葉にパッチーが返す。二人とも、先ほど見たあまりに情けないデュラハンの姿に呆けた表情をしていた。
二人の言葉に頷きながら、乾は天を仰ぐ。
「・・・・・・ほんと。何しにきたんでしょうね、エレさん」
「出落ち・・・私は出落ち」
「・・・何があったですかメメちゃん」
くいくい、と袖を引っ張るミルクにメティーは「あー、まだ落ち込んでるのかー」と頷きながら
「昨日、なんか良い触媒があるから娘を抱きしめてくるって言って地上に行ってたんだけどね」
そこまで言って、あの格好で抱きしめられても迷惑だよなぁ、と遠い目をする。
ミルクの方はむふー、と納得しているのかしてないのかわからない声を上げてうんうん頷き、
「ちょっとぼくも行って来るですね」
「ああ、うーちゃんとかによろしく言っといてくれ」
それから後、妙にぎこちない動きのデュラハンが各地で目撃されるようになるが、それはまた別の話。