「はぁ…、はぁ……」
「ポ、ポコッちが食われましたぞぉぉぉ!!」
私たちは逃げていた。迷路の中で、恐ろしい追跡者の魔の手から逃げ続けていた。共に走っていた仲間達は、次々と魔の手によって帰らぬ人となっていき、今ついにポコスまでもが…………
これは、夢だ。とても悪い夢だ。私には、確かな確信があった。というか夢じゃなかったら泣く。
「うああああ唾液がぁぁぁぁ」←さっき帰らぬ人になったP
「あっはっはっはっはっ!慣れると中々気持よかよ、フェレス!」←帰らぬ人M
「俺まで引き込むなクソ兄貴ィィィ!」←帰らぬ人F
「うまうまうま〜〜」
巨大な顔がバクバクと口を動かす度に、あられもない悲鳴が響き渡る。
「てか、あの顔ってアプエ」
「咲良さん、そこは気にせず!!」
「気になるわーーー!!」
「うま〜〜」
いつから走り続けているんだろうか。かなり長い間走っているような気がする。足は棒のようだ。そして、酷く息苦しい。
「し、しまった!」
先に曲がり角を曲がった太陽が、引き攣ったような叫びを上げる。
「ど、どうした?」
「ここは、行き止まりだ!咲良さん、早く引き返……」
そう言って太陽が振り返り、固まった。まさか、もう追いつかれた? 怪訝に思いながら振り返ると、パック男風の食いしん龍は、そのまま壁に食いつき、食い破りながら壁の中に消えて……
ガバッ
飛び起き、周囲を確認する。タンス、ベッド、椅子、テーブル、太陽……間違いなく、自分の部屋だ。
「………ゆ、夢か。は、はは、そうだよな、夢、だよな……はぁ……」
「随分うなされていましたが、悪い夢でも見たんですか?」
「ああ。随分と酷、い………なんでここにお前が居るんだ? そして、何で平然と私のベッドに横になっててててて」
「……ああ、チェケラッチョーですか」
「違うわ!」
叫び、ベッドから太陽を蹴りだす。
「おっとっと。いや、失礼。咲良さんが非常に寝心地が悪そうだったので、つい心配になってしまいまして?」
「疑問系かよ。てか、勝手に入ってくるなとあれほど言ってるだろうが」
あれほど
『良いか太陽、私の部屋には勝手に入るんじゃないぞ!絶対だぞ!入ったら怒るからな!』
『HAHAHAHAHA』
「押すなよ、絶対に押すなよだと思ったんですがまあ、それは宜しい。咲良さんの寝顔も十二分に堪能できましたし、今日の所は退散させていただきましょう」
「……ああ。気をつけて帰れよ?」
「はい。それではまた後ほど……ああ、そうだ」
ふと立ち止まり、太陽は懐から一冊の本を取り出した。
「これ、随分と面白い内容だったので、眠れない時にどうぞ」
「ああ、ありがとう」
「今日は残念なことに魘される咲良さんしか見れませんでしたが……次の機会には、幸せそうに眠る咲良さんが見たいですね」
「だから、勝手に入るなと……」
「咲良さんが魘されてなければ勝手に進入ったりはしませんよ?」
そう言って、太陽はHAHAHAHAHAHAHAと笑いながら窓から飛び出していった。
月明かりに照らされた太陽の顔は妙に赤かったような気がするが、気のせいという事にしておいてやろう。
ぽりぽりと頬を掻きながら、太陽に渡された本を見る。
『食いしん龍大暴走』
「お前が原因かぁぁぁあ!!」
次の日、太陽は過去最低の低さで火あぶりされる事になるがそれはまた別の話。
おまけ
「キャアアアアアァァァ!」
絹を裂くような女性の悲鳴が、公園に響き渡った。
「グェッヘッヘッヘ!逃げようとしても無駄だぁ!」
走って逃げようとした女性の腕を、グワシ、と鞭状の腕が絡め取る。
「グェッヘッヘッヘ!貴様は良い実験材料になりそうだ。我がワルインダー]の、世界制服の為の礎となるが良い!」
怪人が万力のような力で女性を引きずろうとした、正にその時。
『待てー!!』
「だ、誰だ!?」
小高い丘の上に立つ、五つの黒い影。
『悪党は許さない!プチドラムンダ!』バーン!
『うー………悪い子は、パンパンテュテュ、です。プチドラシルバ』ドドーン!
『……………プチドライスクル』ズババーン!
『プチドラプロセル……です?』ドギューン!
『おっけーでつ。プチドラマルドク、参☆上!』ドンガラガッシャーン!
『5龍揃って、小龍戦隊プチドラー!!』
「という夢を昨夜見たんでつよ、つくえちゃん!」
「……………墓場まで、持っていくと良い」
朝町は今日も平和である。