注意
本作品はヤンデレ(?)成分を多分含んでいます
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『魔物』 -ヤミ竜のコイ-



始めに気付いたのは一体何でだろう?
素直になれなかったのは何でだろう?
実に、実に単純な事ではなかったのだろうか?
初めからその姿に憧れていた?
故のその態度にいらだちを憶えた?
それ故に……
今こういう状態になってしまった?
それを病気と言い表した人がいる。
確かに現れる症状、それらは病気に近い。
でも、それは病気なんて優しいモノじゃない。
それは……魔物。
狂い惜しい程の衝動。
通常とは遙かにかけ離れてしまう。
それは……魔物に取り憑かれているに違いない。
恋という……この世で最も美しく。
この世で最も醜く。
そして……
この世で最も凄惨な魔物に……


切り口はスッパリと。
なるべく早く、切り裂くモノはなるべく鋭ければ鋭い程良い。
だが、脂はとても厄介、どんな名剣も脂がその刃に貯まれば切り味が悪くなる。
かといって時間をかけるわけにも行かない。
時間をかければ、時間をかける程それは腐り、美しいまま保存出来ない。
折角のたった一度の機会にそんな仕打ちはないだろう。
だから、今回は両方で十もあるこのモノに頼ることとする。
切れ味はよい、これは無論。
どのようにすれば容易に切れるのか、どのようにすれば美しく切れないのか。
そんなことは今までの幾十幾百モノ戦いの中で知ってきた。
こんな所でミスをするはずがない。
いくら本当に望んだ本番とはいえ……
いや、本番だからこそミスは出来ない。
切り分けていく。
上身も下身も美しく切れやすい関節を正確に精確に……
共に等しく左右均等に、そう作り上げられた芸術のままに……
その作業を繰り返していく。
時にはその肉体の最も損失しやすい両の瞳はガラスに取り替えてしまうらしい。
だが、勿体ない、実に勿体ない。
含ませてしまえばよい。
腐る前にその姿を残るように闇に包み込み置いておけばよい。
そう、そこが明らかに通常とは違う事。
分かっている、異能は自身。


異質も異質。
完全に逸脱した恋心。
表すならば邪恋。
構わぬ、それでもその人の目が自身を向いてくれるならば。
その人の魂を、心を縛り付けることが出来るならば……
この赤い紅い蜂蜜を自身に浴びせ続け……
甘すぎる感覚に喉が痺れ咽せるまで貪り飲もう。
その肉体は何時しか戻るその時まで……
そっとそっと大事に大事に小さく小さく隠しておこう。
例えその身が四十七の欠片であっても。
その全てを離れバラバラに埋め立てようとも……
忘れることなどあろうものか。
誰かを撫でていた指の全てがどこにあるのか。
誰かを抱きかかえようとしていたその腕がどこにあるのか。
誰かの元に通おうとしていたその足がどこにあるのか。
その全てを、己が忘れているはずがない。
そう、恋という恐ろしい魔物が……
それを忘れさせることはない。


だから、呟こう。
今は肉体には少し届かないけど……
魂は此処にある、だから聞こえる。


「フふふ、アイしていますよ、ふぇレすサン」


紅色に満ち過ぎた月夜の晩
邂逅はイツモの噴水の傍で
吹き上げる噴水は甘い甘い蜂蜜
満月に酔う闇の歌姫が饗宴の唄を奏でる
白と黒というモノクロの世界より
赤というただ一色をさらに加え……
どこか神秘的で
どこか欲情的で
そして
確実に狂気に染まって唄を紡ぐ
それも、長くは続かない
息を吸うことも忘れ
幻想の中その赤に染まるその歌姫に
元より未来など……無い




「で、どこまでが真実、なんですか?」
闇夜に染まろうとも変わらぬ瞳。
その瞳を薄くしつつ彼女はそう、彼に聞いた。
そこは広場の噴水。
そう、何時もと何ら変わりのない石畳と水を噴き上げる噴水。
無論
赤い血の残骸も
四十七という個数に分けられた肉片も
そこには存在しない
ただそこに横たわる二つの姿があるのみ。
そして、その主が二人。
静かに対峙している。
「さぁ、真実なんてモノはこの世に存在しませんよ。あるのは空虚と現実。ただそれだけです」
「……」
そっと自身の竜を抱き上げると後ろを向くその姿に彼女はどこか吐き捨てるように声をかけた。
「一番の魔物は……あなた、ですよ」

その言葉に彼はにいっという笑いを返し……

「知らなかったのですか?パンドラの箱には魔物が住んでいるんですよ?」



それは永劫無限に続く有り得るかも知れない未来の姿
既に幾たびもの間に有り得たかも知れない過去の姿
少女は愛し方を知らなかった
恋しい気持ちは何時しかそのあり方を変えてしまった
恋しさが存在を魔物へと変える

この世で最も恐ろしいモノ

それは存在がその存在を思うと言うこと
この世で最も美しく
そして、この世で最も強いそれは……
誰もが心の奥底で必ず持っている
恋は狂気……

存在はそんな単純なことさえ
時折忘れてしまう
そんな風になった存在を
『魔物』と呼ぶのであろう




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