王の隣に立つ女性が女王?
違うね、その場所における最高権力者が女性であるからその名前がつくんだ。
例え、その人がどんな人であってもね。
女王
「こーんにーちわー」
お馴染みの家ではあるが普段は入った事のない扉をノックしてかちゃっとノブを捻る。
不思議の国の入り口に入るみたいなドキドキを持ってぎいぃぃっと開く扉。
「本当に、本ばっかだ……」
不思議の国の代わりに、そこにあるのは身の丈以上のその本の棚棚棚…。
不思議の国ならぬ本の国がそこには広がっていた。
「エゲ兄、新しいお話を知りたい…」
キッカケは本当に些細な妹分の洩らした一言。
清ちゃんは絵本が好きで、色々な物語を読んだりする。
しかし、家にはそう言った小さな女の子向けの本など置いてはいない。
無論、本は大量にある。マスターであるいーちゃんは錬金術士→人形使いの流れ。
と言う事で、大量の本はある。
ただ、内容としては魔道書に近い錬金術の本とか、馬鹿でもできる人形の使い方とか……
まあ、言ってしまえば専門書になってしまい向いてないのだ。
結果、清ちゃんの本は僕とアシャンが交互に図書館から借りてくるという事をしていた。
お察しの通り、僕は125番地の看板息子龍(?)のアプエゲ。
ハラペコキャラクターで通っているらしいけど、ちゃんとこうして妹の世話を見たり等はしてるのだ。
話が脱線。お腹がくうくう……まあ置いておいて……
「分かった!じゃあ新しいお話を見つけてきてあげる!」
少し寂しそうな清ちゃんの表情を見てどんっと胸を叩き……
……本って、高かったんだね……
人型に紛れて市場の本を見て、そのお値段を見てあえなく僕は撃沈。
無論、お小遣いはもらっている。無理をすれば1冊2冊は買えなくはない。
ただ、清ちゃんの読みスピードで買っていてはお金が見事に底をつく……気がする。うん、分からないけど。
仕方がないのでお馴染みの111番地でのお昼御飯。
『どうしたんだ?珍しくペースが遅いな』
顔を上げればお馴染み、111番地の看板地龍ことぽこっち兄さんの姿。
まあ、ぽこっち兄さんの言う事も確かに。いつもならもう八杯は食べるはずの昼食をまだ三杯しか食べれてない。
取り敢えず宛もなく訳を話してみた結果最初のパラグラフに辿り着いたと言う事。
111番地の書斎。そこは本の山だった。
いや、積み重ねられているとかじゃなくちゃんと整理されていて本棚が整然としている。
他のお部屋より少し大きい、図書館……とまでは行かないけどいーちゃんのお部屋を二つぐらい繋げた大きさがある。
そのお部屋の四方を窓とドアを避けて本棚が立ち、また中央にも本棚が置かれている。
いーちゃんの研究室に何度か突撃した事があるけど此処までの本はなかった。
……まあ、危険だから書斎をどこかに隠していると言う可能性はあるけど……
そんな111番地の書斎の中央にドアを開けても、小さな声を出しても反応しない人の姿があった。
まるで、その書斎の住人で、本から出てきたみたいな感覚すら受けるその人を見てふと思う。
「不思議の国のアリス」という物語で穴に落ちたアリスが出会ったのは赤い女王。
それを捩るなら、扉を開けて本の国の中央にはクローバーが合いそうな緑の女王。
111番地で持ち龍としては数少ないエゲリア種。エゲリアさんと呼ばれる本の女王がそこでゆっくりと本を読んでいた。
取り敢えず、気付いて貰えないとお話にならないので本の女王に僕は声をかける。
「こんにちは!」
少し大きめの声でもってようやく気付いてくれたのかこちらに目が向く。
それと共に動いた緑髪を……あのおみそ汁に入れると非常に美味しい海藻……うん、素直に言えばワカメみたいという感想を持ってしまう。
そんな髪を持った人がこちらを振り向く。名前は聞いた事があるものの、実際にお会いする事は初めてなのでぺこりとご挨拶。
「……こんにちは、えっと……」
「アプエゲです!ウミ姉様!」
インスピレーションが先に口をついてしまいながら、自身より少し身長の高いのエゲリアさんにぺこりとお辞儀をする。
「アプエゲ……ああ、125番地の…ってえっと?う、ウミ姉様?」
「ウミ姉様お願いが!」
大量の本、そこに期待して話を始める。
初めのうち何かよく分からなかったのかウミ姉様は最後まで聞き……
「ふむ、つまりは本を貸して欲しいと」
「うぃ」
片手を挙げてそう答えればむぅっと言う表情のウミ姉様。
「確かに、そう言った本もありますが…貸し出しとかは図書館ではないので……」
はたと思う。当たり前だ、さっき見た本ですら物凄い金額。それを貸してくれと言う方が問題である。
「……あーですが……」
「そうだ!ウミ姉様それなら、清ちゃんを連れてきても良い?此処読むだけなら良いでしょ?」
その言葉にウミ姉が黙る。多分色々考えてる…様な気がする。
「幾つか約束出来たら……まあ……静かにできますか?」
「できるよ?図書室ではお静かに!」
「…本、食べちゃ駄目ですよ?」
「うん、ちゃんと下でしゅー姉様の御飯済ませてから来る!」
コクコク頷きながらじっとウミ姉様の方を見る。
「……二つ向こうの棚の下から2番目辺りからが読みやすいですよ」
本の女王は赤の女王と違って本当に優しかった。
その日以来111番地の書斎には、125番地から小さなお客様が二人か三人やってくる事が時々あるそうな。