名前はイソレナ。
種族は、元パンドラボックスで、現在は人形師。
最強装備は某妖魔が持つ剣を摸して作り上げた炎の剣。
その種族名が指し示した最強の守りである『(パンドラボックス)』を摸した鎧。
或いは、錬金術士における最高の神秘である『賢者の石』を使った衣。
宿せば『根源』より死の情報を引きずり出す瞳を宿す盾。
そして、
その左手の指に光るエルフの指輪(エルブンリング)


2-指輪


「で、エルフといえばうちのあれで、その指輪は見たことがあるんだが……そこん所とお前との関係は?」
「はっはっははっはは」
此処は111番地、朱音亭のレストラン一階。
その中央部で、龍と虎。正確には龍と人形使いのにらみ合いが行われていた。
吹き荒れるはブリザード。吹雪なんてレベルではない。
無論、一歩間違えれば命が関わるそんな状況下で食事を取ろうとする人間はいない。
お客は次々と去っていく。
故に、広い店内に現在は中央で二人だけの会合が開かれているのであった。
言うまでもなく片方は68番地の看板地龍のリュコラもとい咲良さん。
もう片方の訳の分からない笑いを浮かべているのは125番地の主にして現人形師のイソレナ。
そう、通常あまりなかのよろしくない二人の話し合い。それが開かれている時点で恐ろしいとも言う。
その席に案内したぽこっちが頭を抱えていたり抱えてなかったり……
恐らく端の席にすればまだ被害が少なかったのではと思っているのだろう。
まあ、恐らく無駄な努力という奴なのかも知れないが……
「まあ取り敢えず……僕のアクセサリの中にエルブンリングがあるのが何でだ?ということですね」
「ああ、羽堂のエルブンリングがあるのがなぜかということだがな」
リュコラさん突っ込み激しーと呟きつつイソレナが答える。
「……まあ、リュコラさんが思っている通りこれは確かに元々は亜理紗さんのエルブンリングです」
「返せよ」
「いやまあ、ちょいとばかり経緯を知っても良いんじゃないですか……」
数秒の合間もなく言ってのけた咲良さんに苦笑をしつつイソレナがそう答える。
少し悩み……
「いや別に良い」
「あれは……」
「って話すのか!?別に良いって言ったのに!」
「そう、僕があの町に戻ってから……」
「人の話を聞けーーーー!」
咲良さん教訓、我が儘な人間、或いは空気を読まない程度の能力を持つ人間には何を言っても無駄。


「って事で、この指輪が僕の元に来たんです」
「はぁ……」
軽く掻い摘んで、隠すべき所は隠して話された内容に咲良さんは微妙な笑いを浮かべてそう答えた。
「まあ、戦闘の時に飛び出してきて奪ったって事か」
「いや、奪ったって……僕は物取りじゃないですよ?」
「今も持っているって言う所から奪ったって事だろう。さっさと返すならともかく……」
その言葉にイソレナが天を仰ぐ。そこには天井しかないが……
「分かったら……」
「返せたら……もうとっくに返したいのですがねぇ」
「は?」
不思議な表情をして咲良さんがイソレナの言葉の続きを促す。
「……取れないんですよ。これ……」
指し示すは机上の一つの指輪。
咲良さんにしては見慣れたものかも知れないエルブンリングといわれる話題の指輪だ。
「取れないって……取れてるじゃないか。もうちょっとまともな嘘を……」
「こうして、何もない時には取れるんですが、例えば亜理紗さんに返そうとかすると取れなくなるんですよね」
不思議なことですがと続けてイソレナはため息をつく。
対する咲良さんの目線は冷たい。
何言ってんだこの野郎いい加減妄言吐きまくるんだったら地面に穴ほって砂ぶっかけて埋めた後にその顔の傍でたき火してお芋焼くぞこの野郎と表情が言っている。
「……信じてませんね」
「ああ、全く信じられん」
はあっとイソレナはため息をつくと更に説明を続ける。
「どうやら、このエルブンリングはエルブンリング自身が持ち主を選ぶ。らしいんです」
「は?」
「亜理紗さんに聞いたエピソードからなのですがね……あの人がこの町に来る前に自分自身が分かるようなものをはぶん投げたり、捨てたりしたって言うのは?」
「どっかで聞いたかもしれない」
「ともかく、そんな中で何でこれだけが残っていると思います?」
そう言えば妙だなぁと咲良は思う。そう、この指輪だけは前の町から持ってきたと聞いた。
他のものは、一つたりとも残っていないというのに……
「で?」
「捨てても、帰ってくるそうです」
「……はい?」
「どっかに思いっ切り投げ捨ててもいつの間にか服の折り目などに戻ってきている、質屋に売ったら誰かが羽堂さんを思い出すからといって持ってくる……どんな手を使っても、戻ってきたそうですよ」
……嘘だっ!と夕方の道で言いたいと思いつつ、咲良さんは考える。
そう、確かに妙な驚きをしている時があった。そんな時に摘んでいたのは……
「エルブンリング……」
「僕の元に来てからは返ってないらしいですがね。僕の方では、なくさないように指につけて持って行けば亜理紗さんのお宅で指輪が取れなかった。話を聞いて一度滝に放り込んでみたのですがいつの間にか家の机の上にあった……などです。質屋には行った時点で無くなっていて、あれーと思っていたら家の置くはずもない所から出てくる。手で持っていくと手が開かない、指につけていけば龍が本気で引っ張っても取れない。箱に入れていけばパンドラボックスの時代なのに箱が開かなくなるという悲惨な事態……」
「…………」
咲良さんの顔が蒼い。
「だから、返せないんです」
話は終わり。理由を述べきってイソレナは沈黙した。
辺りにひゅううううっと風が流れる。
悪夢、というか此処まで来ると下手なホラーものよりも恐い。
そんな雰囲気が二人の間だから醸し出され……
「……エルブンリングを装備した」
「ん?」
唐突な咲良さんの呟き。それにイソレナが反応し……
「イソレナはのろわれた!ゆびわをはずすことができない!!」
「ひらがなだな!平仮名なんだろ!龍探検ゲームか!!!!!!」
「ひとつの指輪はすべてを統べ、ひとつの指輪はすべてを見つけ、ひとつの指輪はすべてを捕らえ、暗闇の中につなぎとめる」
「火に投げ込んだら文字が見えるんだなってそれは呪いの指輪!やめいっっ!」
「うる、さーーーーい!!」

ずごっっぐをおぉんっ

「うをっ」
「あぎゃっ」
二つの叫び声が出て、辺りは再度沈黙に包まれた。
叫び声は二つ。一つはイソレナ。そして一つはぽこっちという愛称で呼ばれる111番地の看板地龍。
咲良さんが二人から目線をずらす。その先に素晴らしい投球フォームの終わりで制止している緑のかいそ……もといエゲリアさんが立っていた。
「まったく、私の読書時間と図書館では静かにしてください」
「いや、此処図書館じゃないよな。普通の飲食店だよな」
咲良さんの突っ込みをオール無視してエゲリアさんが二階に上がっていく。
残ったのは、ぽこっちに押しつぶされて気絶中のイソレナ。
なぜか分からないまま投げ飛ばされて頭を打って気絶中のポコス。
呆然としたままの咲良さん。
そして机の上に残って輝きいているエルブンリング。


111番地朱音、勝利数+1。
撃退対象:125番地イソレナ
使用武器:地龍(ポコス)
「あれっ!?あれって私の勝利になるんですか!?っていうか、戦闘判定!?」





「そう言えば、この文章って咲良さんでも、イソレナさんでもない第三視点から書かれていますが一体、誰が?」
「…………まさか……」
真相は指輪のみが知っている。



back