「つまりポコス君は跳べる」
「何がどうしてそこでつまりになるのかを教えてほしいんだが」
「人ってのは努力の生き物でだねぇ」
「俺達は竜だよな?なあ?」
さもありなん。と満足気に頷く太陽にげんなりとした表情でポコスが尋ねるが、HAHAHAと陽気に笑って太陽は明日の天気について話始めた。槍が降るらしい。
「ほう、明日の天気は晴れ時々槍……なわけねーだろうが!」
「まあ。明日は盾を差さないとあきまへんなぁ」
「成る程、傘代わりに盾を構えるわけですな」
一瞬だけ、ビジュアル的にありそうだな、と考えポコスは即座にその思考を棄却する。いくらなんでも無理があるし第一前提として槍が降らなければいけない。戦争でも起こるのなら話は別かもしれないが自然現象で槍が降ってくるなら鍛冶屋は商売上がったりである。って。
「やぁ、これはこれは至和子さん」
「太陽はん、おばんどす」
にこやかに笑って、あいている椅子に腰掛ける黒髪の龍、至和子。手に持つグラスには気泡を出す黒い液体が握られていた。
「お一人ですかな?」
「ええ。うちの子達はよう付き合うてくれまへんから。ご一緒してもええどすか?」
「大歓迎ですよ、男ばかりで華がありませんでしたからなぁ」
「華が無くて悪かったな。至和子さん、こんばんは」
「ポコスはん、おばんどす。この間の夜、以来ですなぁ」
にこやかにそう告げる至和子に、あーそういえばそうだったなーと頬をかきながら、ポコスはちらりと太陽を見る。
めがねが光っていた。
「ほほぉ、それは面白そうな。具体的に夜に何があったのかの辺りをkwsk」
「何もしとらん!」
「まあそうでしょうな」
否定の言葉に一瞬で素面に戻る太陽に、肩透かしを食ったような表情を浮かべるポコス。
二人の様子にころころと笑いながら至和子はグラスを傾ける。
「そういえば……随分長くこの村に居りますが、こうして面と向かって酒を酌み交わすのは初めてですかな?」
「そうどすなぁ。白衣に袖通しての『意見交換』以外では、お会いしまへんから……」
ちびり、とグラスを傾ける太陽に相槌を打つように頷く至和子。
「………そういやお前、怪しげな薬作ってたりするよな。至和子さんもそっち系って事か?」
「如何にも。彼女には医学の心得がありましてな。開発した薬物が人体に影響があるかないかの研究をお願いすることがあるのですよ。まあ大半はとっつぁんに飲ませて臨床実験するんですが」
「それで大事になったら、って何度も言うてますえ、太陽はん」
オレジャイアNや人を見ると斬りたくなる薬の時は酷かった。と二人して笑う学者どもに、ポコスは頬を引きつらせる。
そういえば一時やたらと太陽の主がへたくそな歌を広場で歌っていたり他所の家に襲撃をかけていた事があった気が………
「まぁ、失敗は成功のアザーと言いますからな」
「それを言うならふぁざーですえー」
「お前ら黒子さん達に引き渡したほうが世の中のためになるかもな」
HAHAHAと笑う二人組みにポコスは溜息をつく。どうも最近、溜息が多くなった気がする。
俺、どの位幸せを逃しているんだろうか。ほろりと零れて来る涙がジョッキに小さな飛沫をあげて落ちる。
少し、ビールがしょっぱくなった気がする。
「大丈夫ですポコっち。そんな所も君の萌えポイントですからな」
「フォローしてくれ頼むから。なあ、頼むから。」
「……………何故か君が乙女枠な気がしてならん今日この頃です」
「やかましいっ!」
ぴーぴぴーと口笛を吹く太陽の襟元をつかみ、わしわしと揺さぶる。そんな俺達の様子を至和子さんは愉快そうにけらけらと笑う。そのまま勢いのまま飲み続け、そのまま日付が変わるまで3匹で飲み続け、そして。
「そこで記憶がなくなっています。はい」
「あさがえりですかいいごみぶんですねー」
「大変申し訳ございませんでした」
1週間口を利いてもらえませんでした。
お酒の飲みすぎには……注意しましょう。