「お菓子の家って夢だったんですよね。屋根がちょこでー。壁がクッキーで―」
「蟻がよってきそうですよね」
「雨にも打たれますよね」
「くっそうこの大人ぁ!!」
 そんなやりとりをしたのが、何日か前。
 ふと通った朱音さんちもとい朱音さんのお店の前に、一枚の張り紙。

 ビックサイズ! お菓子の家!

「………実現した!?」
 張り紙に向かって思わず叫ぶ。
 朝町にはよくあることだったので、誰もふりむいたりは、しなかった。

13.どこまで冗談が通じないんだ。

「ネタの神の囁きには勝てませんでした」
 にっこり笑うその顔がすごく輝いてます朱音さん。
 彼女の立つ傍らのテーブル。テーブルいっぱいに―――
「お菓子の家だ……」
 しかもすごく綺麗だ。砂糖を振られて白いクッキー。つやつやとした屋根。さらにホワイトチョコかなんかだろうか。屋根と扉に書かれたお花がやたらとらぶりぃ。
「あ、ドアもあきますよ」
「マジで!?」
「面白そうでしたからねえ」
 言われるままにドアを開けてみた。
 ……テーブルとイスの果てまで入ってた。
「次は住んでいる人とかも作ろうかと思います」
「なにを朱音さんをそうさせるんですか!?」
 いつも思ってるけどすごい職人根性だ。あと、純粋に器用ですね朱音さん。すごく、輝いてる。
「面白いには抗えないんですよ」
 そうか、面白いって怖い。
 すごく怖い。先着数名書いてあったけど、いくつつくったんですか朱音さん。
「それにかなたさんが喜ぶかと思いまして」
 よくみたらこれ窓までついてる…。
 とか感心していたら、びっくりした。
 夢のハウスを眺めていた目を彼女に向けると、ものすごくいい笑顔。
 輝いてる。やっぱり全力で輝いている朱音さん。
 っていうか……
「すっごく嬉しいです! 朱音さん愛してます!」
「私もですよー」
 思わず抱きついてみる私。動じない朱音さん。
 自分でやっといてなんですが、これでいいんですかこのお店。
 …まあ、変なのが触ろうとしたら、怖いおにーさんがでてきそうだし、いいのかなあ。
「風矢君は小町さんにかまけてて絶対作ってくれないし! 自分でここまではできないし! 絶対無理だと思ってたのにー!」
「よかったですねー」
「お礼になんでもしますー!」
「あはは、なんでも―――」
 ぽん、と背中を叩かれる。
 優しい力と、優しい感覚。
 けれど一瞬あいた間に、冷たい汗が伝わって。
「じゃあ、言質はとった、って皆様に伝えにいきますね」
 その言質がなにに関わるか、なんて。考えるまでもなく。
「……び………リアン?」
「はい。美魔法 少女戦士 カナタリアンの次回の公演です」
 いい淀んだと言うか、言葉にしたくなかった私に。
 彼女はそれはそれは綺麗にその言葉を発した。

「………またかよ!?」
 意識が遠のいて、もうこのままゴールしちまおうぜ☆(現実逃避の眠り的なものに)って声が聞こえたけれど。
 無視してつっこむ、いや叫ぶ。
「だって、すごく好評らしいですよ?」
 うん懐はあったかいんですけど! ですけど!
 でもだってというか、そうだ!
「しゅ、朱音さん! 朱音さんもいつまでもレッドサウンドでいいんですか!? あれでいいの!?」
「だって、面白いですし(かなたさんの反応が)」
「かっこの中まで口に出さないで!? て言うかみんななんで飽きないの!? ねえ、なんで!? どうして!? なぜなのよー!?」
「あはは。『残念だったねえ』」
「何そのメタネタ! いや曲違うからメタじゃない!? ……う」
 叫び過ぎて喉をさすると、すかさずお水が出てきた。
 …おいしい。
 いや、そうじゃない。一体どこから。でもない。
「みんな意地悪だ…」
「嫌ですね。愛ですよ愛☆」
 面白いことに対する?
 浮かんだ言葉を水で押し込み、こっそり目の端をぬぐってみる。
 だって、もう。
 もう、諦めるしかない流れじゃん、これ……

 朱音さんお手製のお家はすごくおいしかったです。
 うん、すごくおいしくて。
 だから仕方ないなんて思うから駄目なんだ。私の馬鹿。



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